先の紹介した“unlearning”は有名なことばらしく、いろいろなところで使われている。目についてものを2つ挙げておく。
<unlearningとは、それまでの限られた経験から体得してきたことをいったん解体して、一から組み立て直すことと言えよう。この営みに欠かせないのは、自分と異なる背景や違った価値観を持つ人々、すなわち異質な他者の存在である。大学入学後に高校までとは比べものにならないほど多種多様な人々と出会い、「目から鱗」体験を重ねた人は、少なくないであろう>(日比谷潤子「unlearningめざして―大学の国際化の意義」『IDE現代の高等教育』596号、2017年12月、p9)
<「“unlearning”のすすめ」は、学びの否定ではありません。「すでに学んだこと、とくに悪いことなどを、あえて忘れる」。ここで重要なのは、“unlearn”の前に“learn”がなければならない、という点です。「すでに学んだこと」なしに、「あえて忘れる」などできませんから。つまり「“unlearning”のすすめ」には、大学入学までじっくりと学んできてください、という願いがまずは込められています。
本橋哲也は、“unlearning”の意味を次のように記しています——「学ぶことによって自らの特権を解体し、他者に対する偏見を解きほぐす」。 つまり自分の依って立つところを見つめ直して「他者」との共生を探るような「学び」を、“unlearning”として提唱しています。“unlearning”とは、「違い」とともに生きるための倫理です。(木下 誠http://www.seijo.ac.jp/education/falit/seijo-olumn/05/index.html)