大学生協の学生生活実態調査から

  全国大学生活共同組合連合会(大学生協)は、2月13日に「第47回学生生活実態調査」の結果を報告した。マスコミにはあまり記事が出なかったが、全国の28大学8498名の学生の調査データが得られていて、過去のデータとの比較もできて、とても貴重な資料である。
まだ、一部のデータしか公開になっていない(報告書は毎年3月に出る予定)ので、私の関心のあること(たとえば「大学生活の中で、現在最も重点を置いていること」の変化などは、まだ見ることはできないが、震災関係のことの大学生の意識に関しては、公表されていて、興味ぶかいデータがある。

 「原子力発電所の運用について」聞いた質問では、次のような回答の分布になっている。
「今すぐに全てを廃炉にすべき」(全体3.5%、男子3.2%、女子3.9%)
「将来的に全てを廃炉にすべき」(全体37.5%、男子32.0、女子44.6%)
「規模を縮小し存続すべき」(全体23.2%、男子23.3%、女子23.1%)
「現状を維持すべき」(全体18.9%、男子23.7%、女子12.8%)
「積極的に活用すべき」(全体4.3%、男子7.0%、女子0.9%)
「わからない」(全体10.0%、男子8.0%、女子12.5%)
「その他」(0.9%)、「無回答」(1.7%)。
 上記のように、「廃炉派」は全体では41,0%、「存続派」は46,4%と、存続派の方が多く、特にその傾向は男子に顕著である(男子;「廃炉派」35.2%<「存続派」54.0%、女子;「廃炉派」48.5%>「存続派」36.8%)。
 これは、文系と理系の学生でも意識の違いが大きく、同じ男子でも、理系は「廃炉派」31,0%、「存続派」58.2%、文系;「廃炉派」42,2%、「存続派」46.5%)と、理系の男子に存続派が最も多く、男子でも文系になると10%ほど少なくなる(女子でも文系と理系の差は10%ほど)。
 私の感想としては、大学生でもこんなに「存続派」が多いのかという驚きである。特に理系の学生に「存続派」が多いことは、広い社会的視野からの教育や議論が必要なことを感じた。

公私の違い

中国の学生を案内していて公私の違いを感じたことがある。
休日で上智の図書館は閉まっていたが、入り口で守衛さんが「少しならいいですよ」と言って、中を見せてくれた。東大の綜合図書館は開いていたが、「専任教官と一緒であれば平日の5時までは見学できるが、今日は休日の5時30分であり、あなたは専任の教官ではないので見学は(絶対に)出来ない」と冷たく断られた。
法律や規則通りにするのが公、人を見て融通をきかせてくれるのが私のような気がする。
中国の学生で「法律の日中比較をしたい」と言っていたものがいたが、日本は法律万能主義で、中国は日本の私的な面(普遍主義に対する個別主義)も重視されるのではないかと思った。もちろん、私的、個別主義のいき過ぎは、いろいろ弊害がありいいわけではないが、法律・規則万能主義も味気ない。

補足

以前の書き込みの補足です。
1 「額田の大君」は、「額田王」の間違いです。
2  「忍ばずの池」は、「不忍の池」の間違いです。
(ハッキリした名前の由来はないようです。一般的に、上野台のことを「忍ヶ岡」と呼んでいたのに対し、その下にある池という理由で「不忍」の池と呼んでいたと理解されているようです。文献に基づくと、語源として次のようなものがあるようです。1.「忍ヶ岡」に対して「忍の池」となり、それが次第に「不忍池」となった、とする説『江戸妙子』『江戸名所図会』『増補江戸惣鹿子』 (以下省略http://detail.chiebukuro.yahoo.co.jp/qa/question_detail/q148446379)
3 日中比較文化に関して、水沼文平氏より、興味深いコメントをいただきました。
「中国の学生と話ができて良かったですね。日本語とか日本文化を専攻している学生かと思われますが、漱石の三四郎とか額田王とか、確かに今の学生は知らないでしょうね。私の知人で、文化大革命の頃、毛沢東少年少女だった人が日本の大学に留学、日本が好きになってそのまま住みついたり帰化した人が4、5人います。動機はそれぞれですが、日本が住みやすいというのが共通した理由のようです。最近、加藤幸次先生は日中合作の「中国人用日本語テキスト」を作成中ですが、漢字という表意文字の持つ特性はアルファベットにはないものがあります。10くらい並んだ漢字の意味を一瞬にして理解するなどABC文化圏では不可能なことです。中国、ベトナム、台湾、朝鮮、日本の漢字文化圏は共通の文化(仏教、儒教など)を持っており、共産化している中国でもこのDNAはしっかりと温存されているはずです。そういう一端を先生の「上海の大学生」から垣間見ることができました。中国の学生に教えられ得るものが多かったと先生は言われていますが、こういうことこそ近隣諸国との友好関係を築く上で最も大事なことだと思います。」
4 2月10日ライブの様子(写真)は、下記をご覧ください。
http://ameblo.jp/aoakuamusic/

上海の大学生

上海の同済大学で教えている友人から、「教え子の日本語学科の学生が、東京の大学(目白大学)の語学研修に2週間行っていて、千葉の方にも行きたいと言っているので、可能であれば、どこか案内してほしい。敬愛大学でもよい」というメールをもらった。
同済大学のサイトを見ると、教職員数4200人、学生数5万人で、世界ランキング 28位の大学であることがわかる。入学競争の厳しい中国の大学の中にあって、超エリートの大学生が集まっているところのようである。 
急な連絡であったので、知り合いの学生にも連絡もできず、11日の朝10時、宿泊先に近い「参宮橋」(小田急線)の駅に一人で向かった。千葉県で考えられるのは成田、佐倉、幕張メッセ、稲毛海浜公園、御宿などだが、千葉より江の島・鎌倉、本木ヒルズ、お台場、葛西臨海公園、上野国立博物館、江戸博物館、秋葉原あたりの方が、いいのではないかと思いながら、駅に向かった。
10時に現れたのは、女4人、男一人の5人の同済大学3年生の学生で、知的で感じのよいおとなし目の子たちであった。聞くと既に、新宿、横浜、秋葉原、江戸博物館は行っていて、出来たら、上野公園と東京大学に行きたいとのことであった。
そこで、そこを目指し、途中下車しながら行こうと思い、新宿に出て、総武線各駅停車で上野を目指した。最初に四ツ谷で降り、上智大学に寄った。イグナチオ教会をのぞいたら、ちょうどボーイスカウトの大会のようなものをやっていて少し見学させてもらった。上智大学は春休みで学生も少なかったが、2号館17階からの展望、図書館見学、学生食堂(早めのお昼を食べた。学生はラーメンとかつカレーを食べた)と回り、中国の首相も上智に学んだことがある(?)ようで、親しみを感じたようだった。
次に飯田橋で降り、後楽園(庭園)に向かった。途中、日中交流協会の美術館で貴州の染め物展をやっているのでそれを見た(貴州出身の子が一人いた)。後楽園は、私もはじめて行く日本式の庭園で、木々と池があり、花の季節に来たら、さぞきれいと思った。 そこで、カワセミや獅子舞を見ることができた。
そこから、水道橋を経由して、神田の古本屋街に行った。そこで学生は、谷崎潤一郎の評論や、額田の大君の本など、皆が専門書を探すと言うので、日本文学の専門店を回った。(谷崎潤一郎など皆好きのようで、びっくり)。三省堂にも三〇分ほどいた。
その後地下鉄で「淡路町」から「本郷三丁目」まで行き、東大の赤門、安田講堂、三四郎池を見学した。東大が、憧れの大学らしく、感激していた(漱石の「三四郎」のことは皆、当然知っていて、興味深げだった。日本の学生で、漱石の「三四郎」を知っている学生はどれだけいるだろう・)。
その後、東大の小林雅之教授の研究室を尋ね、1時間ほど歓談した。一人ひとりに、興味のある分野と将来のことなど(大学院入試のような雰囲気になってしまったが)話してもらい、それぞれとてもしっかりした考えを持っていることに、感心した。四人が大学院進学を考えていて、分野は、教育、文学、社会学、日中比較文化とのこと、一人は日本の企業で働きたいと言う希望で、八月にはインターシップで日本に来るとのことであった。東大病院に、天皇が入院していると言ったら、天皇の近くにいると言うことで、感激された。
その後、「忍ばずの池」を経由して、アメ横を通って、御徒町で、遠慮していたが、居酒屋(土間土間)に入り、日本食らしきものに挑戦してもらった(焼き鳥も焼き魚も鍋も、美味しそうに食べていた) 。その後、新宿まで送ると言ったが、自力で帰れるというので、秋葉原別れた(無事に帰ってくれたことを願う) (結局、目的地の上野には辿り付けなかった。私らしいいい加減な案内であった)
  中国の学生(特にエリート大学の学生)は、日本の一時代前の学生に近く、遊びやおしゃれよりは、学問や将来のことを考え、地道に勉強する態度が身についていると感じた。
神田の古本屋街や東京大学に興味を示し、そこに行った時嬉しそうにしているのを見て、現代の日本の学生との違いに愕然とした。「谷崎潤一郎」の本は私も若い頃読んだので知っていたが、学生が必死に探していた「額田の大君」のことは私は無知だし、「忍ばずの池」の由来を中国の学生から教えられる羽目になった。
東京を案内したのは私だが、教えられ得るものが多かったのは私の方であった。中国の学生に感謝。日中学生文化の比較をきちんとしたくなった。

ライブのお知らせ

2012年2月10日(金)
~「Next Frontier vol.5」AO AKUA/COMEAROUND レコ発2マンライブ~

時間:open18:00/start19:00
料金:3,000円(1ドリンク込)
会場:南青山 MANDALA (銀座線、外苑前駅徒歩5分)
リンク:http://www.mandala.gr.jp/aoyama.html
出演:AO AKUA・COMEAROUND・and more