高祖敏明教授の最終講義

今日(3月3日)は、上智大学の高祖敏明教授の最終講義と感謝の会が上智大学で開かれ、出席させていただいた。
教育学科の高祖教授の学識と人柄のよくあらわれたいい会であった。
昔の教育学科の同僚の先生方(加藤先生、香川先生、平野先生、杉村先生、奈須先生、湯川先生)にもお会いすることができ、その他多くの教え子や上智関係者にも会うことができ、昔を懐かしんだ。
上智の教育学科の卒業生もいろいろな分野で活躍している。下の写真の一番右の右から2番目は、ゼミの卒業生でミュージッシャンの宮永次郎氏 (ttps://ja.wikipedia.org/wiki/)

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「頭」と「心」と「からだ」がばらばら

評論家の加藤典洋は、その著書『村上春樹は、むずかしい』(岩波新書2015)の中で、「高度情報化社会の到来などといわれるようになったあたりから、私たちの生の経験は『頭』と『心』と『からだ』がばらばらに世界とつながるようになった」(202頁)と指摘し、村上春樹の『ダンス・ダンス・ダンス』以降の作品に、そのような人物を登場させているという。
普通、人の「頭」と「心」と「からだ」は一体のものである。だからこそ人は相手を信頼し一貫した行動を期待できるが、それがばらばらだとしたら、人の何を信用すればいいのであろうか。
また殺人を犯した「からだ」と「心」や「頭」が別物だとしたら、その犯罪をどう裁けばいいのであろうか。(今でも心神喪失状態で犯した罪は罰せらられない)
「頭」と「心」と「からだ」がばらばらだというのは荒唐無稽と、決めつけられないのが現代である。
他界から異界へ、隠喩から換喩へと、村上の世界は移っており、それに共感する我々読者がいる。

最近の入試問題

最近京都大学などの入試問題に関してマスコミを賑わす記事を読むことがあるが、入試の出題者の大学人は、自分の研究とはあまり関連しない仕事に頭を悩ませていることであろう。そうかといって予備校関係者に出題を頼むこともできない。
最近の興味深い入試問題に関して、卒業生のU氏からいくつか知らせてもらった。現代の社会風潮を反映した問題も出題されていることがわかる。

<1【2018 早大(スポーツ科学部)小論文】
じゃんけんの選択肢「グー」「チョキ」「パー」に、「キュー」という選択肢も加えた新しいゲームを考案しなさい。解答は、新ゲームの目的およびルールを説明するとともに、その新ゲームの魅力あるいは難点も含めて、601字以上1000字以内で論じなさい。
2 2018 早稲田大(国際教養)(英語の自由英作文問題)
Qualities like mental focus and dexterity are very important in some sports. This has led some people to propose that playing video games should be recognized as an Olympic sport. Write a paragraph in ENGLISH giving your own opinion on this proposal, with appropriate reasons and examples.
3 早稲田(政経)の自由英作文は、
2017年 “Gay marriage should be made legal in Japan.”
2018年 “A law should be passed in Japan establishing a minimum percentage of women in key positions in the government and major corporations.” >
4 早稲田(政経)2017年、一橋大(前期)2013年
Recently, many governments around the world are legalizing marriage between two people of the same sex. Legalizing same-sex marriage is a good idea in Japan. Explain why this is true. (120-150 words)が類題。

春近し

稲毛海浜公園の海や、草花の様子から、春の近いことを感じる。

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稲毛海浜公園は、4月からリニュ―アルされるらしい。どうなるか楽しみ。

<稲毛海岸一新 「民間航空発祥の地」記念館閉鎖へ(朝日新聞 2018/02/26)
鉄骨2階建て約440平方メートルのフロアには、写真や地図などの史料とともに、当時空を飛んだ奈良原式4号機「鳳(おおとり)号」の復元機が展示されている。昨年度は約5万4千人が訪れた。 稲毛海浜公園の一帯は、4月以降に大規模リニューアルが行われるため、記念館は3月で閉鎖となるが、市公園管理課の担当者は「稲毛の浜が装いを変えた後も、復元機を何らかの形で展示できれば」と話す。 
77年に開園した稲毛海浜公園のリニューアルは、ヨットハーバーとスポーツ施設を除く約65ヘクタールが対象区域で、「INAGE SUNSET BEACH PARK」をコンセプトに不動産業のワールドパーク(美浜区)を中心とする5社で構成される事業体が昨年6月、事業予定者に選ばれた>

雛飾り 階級社会

雛飾りのことをもう一度。今の季節雛飾りが一番季節を感じる。
昨日(24日)は、天気もよく暖かかったので、御宿へ犬の散歩に行く。
犬(ソフィー)は、浜辺の砂を嫌い、雛人形には興味を示さず、昼寝を決め込み、浜辺とひな人形を楽しんだのは人だけ。
いつも人の少ない御宿も、人が多く大変な賑わいではあったが、高齢者ばかり。
今の若者は季節の移り変わりに心を寄せる余裕はないのかもしれない。

今日の朝日新聞の書評に橋本健二氏の『新・日本の階級社会』(講談社現代新書)が取り上げられていた。橋本氏は東大に在学中に私の武蔵大学のゼミ合宿にも参加し、その後私も勤めたことのある武蔵大学にも勤務していた。
橋本氏は以前から階層というより階級が日本には存在することを指摘していたが、この本では、労働者階級の中に、正規労働者と非正規労働者「アンダークラス」)の格差が大きくなっていることを指摘しているという。(下記参照)。

■「アンダークラス」生まれ固定化 (朝日新聞2月25日朝刊)
 「階級」をキーワードに、日本社会の格差の現状を、最新の社会調査データに基づいて読み解く書だ。階層ではなく、階級という言葉を用いるのは、(1)資本家(経営者、役員)、(2)新中間階級(被雇用者管理職、専門職、上級事務職)、(3)労働者、(4)旧中間階級(自営業)という四つの社会学的な階級分類に基づいて、議論を進めるからだ。
 しかし本書は、こう階級4分類を紹介しておきながら、実はいま階級は五つあるという。なぜなら近年、労働者階級の中で正規労働者と非正規労働者の格差が大きくなっており、非正規労働者層を一つの階級(「アンダークラス」と呼ばれる)とみなす必要が出てきているからだ。アンダークラスは就業人口の約15%を占め、平均個人年収は186万円と、他の階級に比べて極端に低く、貧困率は逆に極端に高い。経済的困窮だけでなく、心身の健康、人とのつながり、という点でもアンダークラスとそれ以外で明らかな格差がある。
 データからは、階級間での人々の移動性が低下し、階級の固定性が強まっていることが読み取れる。戦後日本の活力の一つは、社会的な流動性が高い点にあったが、労働者から新中間階級へ、さらに資本家へといった上昇のチャンスは、閉じられようとしている。
 気になるのは、アンダークラスで平等化への要求が、排外主義と強く結びつくようになっていることだ。日本でも、イギリスのEU離脱やトランプ米大統領誕生の要因となったポピュリズムと同様の芽が現れ始めているのだろうか。
 著者は、社会分断を乗り越えていく希望はあると強調する。格差縮小を志向し、排外主義・軍国主義化に批判的な、リベラルな価値観を持った人々が階級を超えて広範に存在することも浮かび上がってきたからだ。決して煽(あお)らず、データに基づいて冷静沈着に論を進める筆致に好感がもてる。格差を論じる上での、基本書となるだろう。 評・諸富徹(京都大学教授・経済学)

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