『現代の教育課題を読み解く』(2024.12)の紹介 

 中央研究所研究報告N0103『現代の教育課題を読み解く』(中央教育研究所2024年12月25日)の内容は、目次(1ページから2ページ)に示されている(WEBで全文読める)。さらに「はじめに」及び第1章にその要約が示されてる。ここでは、「現代の教育課題」をどのように捉えているかという観点から、全体を紹介する。

 1 元東京教育研究所の主任研究員の村瀬光生氏から、長年の現場経験から、戦後の6334制は制度疲労をおこし立ちいかなくなっている、「小中一貫教育」(義務教育学校)、に関して、一度研究会に来ていただき話を聞き、記録に残した(第7章)/ 2 「令和の日本型学校教育」の答申で書かれていることが絶対的に正しいとされる中において、その前提となっている学年制や履修主義が、実際の現場では立ちいかなくなっていることを、複式学級をフィールドワークした遠藤宏美氏(宮崎大学准教授)が指摘している(第8章)/ 3 加藤幸次先生と新井郁男先生は、若い頃から国際通で知られ、国立教育研究所や文部省にいる時から、国際会議に出席され、英語を使って仕事をされてきた。その二人の先生が、これからの日本における英語教育に関する提言は、とても貴重なものである(2章、コラム)/ 4 教育社会学の研究業績には、教育のあり方を根本から問うもの、教育現象に関して、新しい視点を提示するものが多くある。それを紹介したのが、第15章(望月重信「教育のひとことから」から教育の課題追究へ)、第20章、「日本の子ども研究」(望月重信)である。/ 5 教育の実証研究の方法として、量的なアンケート調査だけでなく、エスノグラフィー、歴史研究、国際比較研究、構築主義、文化研究、文献研究などの方法のあることを、いくつかの事例をあげ、その方法を具体的に示した(第16章、武内清「教育社会学の文献(本)を読む」。 / 6 その他の、新しい方法として、「オートエスノグラフィー」(第19章、浜島幸司)、「ワードカフェ」(第6章、谷田川ルミ)の試みも、具体的に紹介している。/ 7 現在の教育問題で深刻、且つ重要な問題として、教員の離職率や休職率の高さ、児童生徒の生きづらさ、キャリア教育の問題がある。それぞれに関して、第10章(西本裕輝)、第9章(腰越滋)、第11章(大島真夫)が、教育社会学の実証的な方法で解明している。/ 8 現在、社会のグローバル化、国際化は大きな問題である。外国の教育の方法を観察して、日本の教育のあり方を再考することは、私達のプロジェクトでも過去に実施している。プロジェクトメンバーで、中国の上海と台湾の学校視察に行ったことがある。その時は、主に両国の英語教育の先進性に驚嘆した。外国のことは、短期の旅行者では、なかなか見えない部分(潜在的な部分)がある。長期にその国に住み現地の学生や人々の生活を観察している秦政春・同済大学客員教授が、中国人の行動規範や日本への留学に関して寄稿している(第13章)/ 9 さらに、現代は、外国(アジア地域)からの日本の学校への子どもや若者の入学数の増加が問題化している。それに対して、どのような対処が必要か、根本的なところから考える必要に迫られている。その教育現場に詳しい第1線の研究者・実践者の角替弘規・静岡県立大学教授が寄稿している(第12章)/ 10 ここ数年、人口減少、新型コロナの蔓延、学校への一人一台のPC端末の導入、社会の多様化に伴い、日本の教育全体、特に日本の公教育は危機に瀕しています。そのことの実態と再構築の方法に関して、詳しく、一人1台のPC端末の子どもへの配布と使用の実態と、総合や探求学習の実践も含めて書いたのが、馬居・米津の第4章と第5章である。それに関して、馬居氏は、「生活科と総合の原点の開示の形式をとりながら、一人一台PCと生成AIを駆使する公立学校が担うべき課題を提起する」と書いている。/ 11 今話題を集めている生成AIに、教育のことをいろいろ質問してみた。その解答から、生成AIは、正しいことを解答してくれるのかを、判定しようと試みた(第17章、武内清)

知り合いの研究者からは、下記のような感想(コメント)も寄せられている。

「ご書名通り教育課題を、教育社会学を軸足に置いて様々な切り口に即して、豪華な執筆陣によって鋭く読み解かれているご労作だと敬服します」(A氏)/ 「とても多くの先生方が書いておられるようで、読み応えがありそうです。また、多くの章が「1人称」で書かれていることも、大きな特徴と思います。大学教員の研究業績としては、学術論文みたいなものがどうしても重視されるのですが、本書にあるような論文とエッセイの中間みたいなようなものが、学部学生とかには、学術論文よりはるかにわかりやすい場合があります。卒論指導をやっていて、常々そういうことを感じておりました。本書をざっと拝読して思ったのは、そういうニーズにピタッとはまりそう、ということでした」(T氏)/ 「「自分英語のすすめ」「1人1台PCの課題」「小中一貫教育」「青少年の自尊感情」「生成AI」「ソーシャル・キャピタル」「日本の子ども」等々、日本の教育課題の今を多角的に取り上げ、それらに寄り添って論じられている、リアリティのある論集だと感じました。それにしても、沖縄の教育、特に学力問題は深刻ですね。沖縄の初等教育に関しては2014年以来下位を脱したと私はうかつにも思い込んでいましたが…。今の日本の教育課題、あらためて考えさせられました。」(I氏)/ 「A I との対話、やはり実話だったのですね。脅威を感じます。17章を読んで、「ここまで進化しているのか!」と驚きです。これからも、刺激的なお話をお聞かせくだされば有難いです。」(Mi氏)/ 「報告書を手にしての最初の印象は、先生のネットワークの多様性をあらためて感じさせられた。また内容的にも、興味深い章がいくつもありますので、これからじっくり拝読させていただこうと思っています。」(K)

お雛様

そろそろお雛様の季節。1年に1度は、外の空気に触れてもらわないと気の毒。もううちに来て40年以上が経過しているが、その優雅なたたずまいは以前のまま変わらない。黙って、うちの娘たちを守ってくれているのであろう。感謝する。

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小田原と熱海の梅林、雪の富士山を楽しむ

 歳をとってくると、季節の花をあと何回見ることができるのだろうと思う時がある。それで、見ることができるうちに出かけることになる。今回は自宅の稲毛から西へ、伊豆方面に出かけ、小田原の梅林(写真1,2枚目)と熱海の梅林(3枚目)を見た。それぞれ素朴さ(小田原)と絢爛さ(熱海)という趣の違いがあり、満喫できた。熱海から東伊豆の海沿いの道をかなり南下して見に行った河津桜はまだ蕾状態で残念であった。旅に期待外れは付きもの。

1日目(2月18日)は熱海、2日目(19日)は西伊豆の堂ヶ島の宿に宿泊した、熱海の部屋から朝に海から登る日の出を見ることができた(4~5枚目)。夕方には西伊豆の堂ヶ島のホテルのロビーから海に沈む夕日を見ることができた(6枚目)。翌日(20日)の西伊豆からの帰り道は、雪を被った富士山をほぼ正面に見る道程で、車から富士山の雄姿を長時間眺めることができた。西伊豆の海の景色も素晴らしい。また来年も来ることができればと願う。

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ビル・ゲイツの発言に関連してー英才教育と生成AIのこと

2025年2月4日の朝日新聞朝刊に掲載されていた米マイクロソフト創業者のビル・ゲイツ氏の「テック 過去と未来―AIが世界を加速、我々が賢明なら、マイナスを最小限に」には、示唆的なことがたくさん書かれていた。そのうちから、氏が「自閉症スペクトラム」と今なら診断されていたろうということと、AIが科学分野に多くの恩恵をもたらすだろうという箇所を、抜き出しておく。

 ――自身の子どもの頃を振り返り、「今なら自閉症スペクトラムと診断されただろう」と告白しました。ー 「私の社会的スキルは、平均的な子どもより発達が遅かったと思います。一方で、誰よりも多くのSFの本を読むなど、物事に没頭できる能力がありました。大人と話をして知識を引き出し、説明してもらう力にはたけていた。そうした中で数学やソフトウェアに触れる多くの機会があり、ソフトウェアの重要性に気づくことができました」 「私の行動は奇妙で、大人たちは私の能力の濃淡に少し困惑していました。」 「私を取り巻く環境がうまく行ったという事実が、他の子どもと少し違う能力を持つ子どもの親を勇気づけるものになればと考えています」

 ――あなたはMSが出資するオープンAIの幹部たちと頻繁に話をしているようですね。AIの進化の速度、恩恵とリスクを、どうみていますか。 ー「新薬の開発や科学分野では大きな恩恵があるでしょう。生物学はとても複雑で、AIなしでは不可能だったような洞察が可能になります。教育面では、自分の学力に合った『家庭教師』を持てるようになる。特に貧しい国では医師や教師が不足しています。医療分野では、我々の財団でもAIを新薬発見に活用しており、分析のスピードを著しく加速させています」 「AIはまだ初期段階ですが、大きな転機となったのが、(オープンAIが一昨年公開した生成AIの基盤モデル)『GPT4』でした。AIが、ここまでうまく人間とやりとりできるようになるとは思わなかった。もちろん、正確性という面ではまだ多くの問題がありますが、進化は続くでしょう」

発達障害とみなされるような性格のビル・ゲイツがマイクロソフトを開発するという偉業をなしたということから、大切な示唆が得られる。つまり障がい者の発達支援を、一般の子どもからの遅れの回復とみるだけでなく、一般児より優れている、先進的な部分があり、それを伸ばすギフテッドの教育(英才教育)の研究や実践がもっとなされるべきだということである。私も以前に、内外教育のひとこと(2024年11月19日)にギフテッドの教育(英才教育)について書いたことがある(添付参照)

生成AIが科学や学問分野に大きな恩恵を与える可能性に関しては、私も教育研究の分野に関して、具体的な例で示し、(『現代の教育課題を読み解く』(中央教育研究所 研究報告 NO103 2025,第17章)https://chu-ken.jp/pdf/kanko1) 、               その一部を、2月14日発刊の「内外教育」で紹介した。

2月の内房、水仙の花

2月の初旬に今の季節は、日本海側大雪(太平洋側でも南の方は雪)、太平洋側の関東は晴れの日が続いている。私の住んでいる稲毛(千葉市)でも雪や雨は降らず晴れや曇りの日が続いている。昼間日が照るとあたたかく朝晩は寒い。夜の冷え込みがあるので、春の花は、球根あるいは小さな苗の状態で、春の到来を心待ちにしている。

今の季節、南房総はあたたかく、もう菜の花スットクやキンギョソウ、そして河津桜(頼朝桜)も咲いているかもしれないと、晴れた日(2月5日)の朝に思い立ち車で稲毛から高速の館山道に乗り内房総を南下した。途中、天羽の別荘地から東京湾を眺め(やはりいい眺め、富士山が雲に隠れ一部しか見えないのは残念だったが)、その近くの漁業組合の運営する「ばんや」に立ち寄り、「鯛のあら煮定食」を食べる。なかなか美味しく、そこで時間を費やし、午後2時を過ぎる。

そこからまだかなり距離のある南房総のお花畑を諦め(房総は、伊豆と比べかなり大きい)、近くの「佐久間ダム」に行くことにした。佐久間ダムは、たくさんの頼朝桜(河津桜)で有名なところだが、2月上旬で頼朝桜はまだ蕾状態で、その代り梅の花がきれいで、水仙も真っ盛りで、その香りも含め結構楽しめた。帰りは途中の「道の駅」で、スットクやキンギョソウ、水仙の花を買い、帰路についた。近所にも房総の花をおすそ分けして喜ばれた。

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