上海の同済大学で教えている友人から、「教え子の日本語学科の学生が、東京の大学(目白大学)の語学研修に2週間行っていて、千葉の方にも行きたいと言っているので、可能であれば、どこか案内してほしい。敬愛大学でもよい」というメールをもらった。
同済大学のサイトを見ると、教職員数4200人、学生数5万人で、世界ランキング 28位の大学であることがわかる。入学競争の厳しい中国の大学の中にあって、超エリートの大学生が集まっているところのようである。
急な連絡であったので、知り合いの学生にも連絡もできず、11日の朝10時、宿泊先に近い「参宮橋」(小田急線)の駅に一人で向かった。千葉県で考えられるのは成田、佐倉、幕張メッセ、稲毛海浜公園、御宿などだが、千葉より江の島・鎌倉、本木ヒルズ、お台場、葛西臨海公園、上野国立博物館、江戸博物館、秋葉原あたりの方が、いいのではないかと思いながら、駅に向かった。
10時に現れたのは、女4人、男一人の5人の同済大学3年生の学生で、知的で感じのよいおとなし目の子たちであった。聞くと既に、新宿、横浜、秋葉原、江戸博物館は行っていて、出来たら、上野公園と東京大学に行きたいとのことであった。
そこで、そこを目指し、途中下車しながら行こうと思い、新宿に出て、総武線各駅停車で上野を目指した。最初に四ツ谷で降り、上智大学に寄った。イグナチオ教会をのぞいたら、ちょうどボーイスカウトの大会のようなものをやっていて少し見学させてもらった。上智大学は春休みで学生も少なかったが、2号館17階からの展望、図書館見学、学生食堂(早めのお昼を食べた。学生はラーメンとかつカレーを食べた)と回り、中国の首相も上智に学んだことがある(?)ようで、親しみを感じたようだった。
次に飯田橋で降り、後楽園(庭園)に向かった。途中、日中交流協会の美術館で貴州の染め物展をやっているのでそれを見た(貴州出身の子が一人いた)。後楽園は、私もはじめて行く日本式の庭園で、木々と池があり、花の季節に来たら、さぞきれいと思った。 そこで、カワセミや獅子舞を見ることができた。
そこから、水道橋を経由して、神田の古本屋街に行った。そこで学生は、谷崎潤一郎の評論や、額田の大君の本など、皆が専門書を探すと言うので、日本文学の専門店を回った。(谷崎潤一郎など皆好きのようで、びっくり)。三省堂にも三〇分ほどいた。
その後地下鉄で「淡路町」から「本郷三丁目」まで行き、東大の赤門、安田講堂、三四郎池を見学した。東大が、憧れの大学らしく、感激していた(漱石の「三四郎」のことは皆、当然知っていて、興味深げだった。日本の学生で、漱石の「三四郎」を知っている学生はどれだけいるだろう・)。
その後、東大の小林雅之教授の研究室を尋ね、1時間ほど歓談した。一人ひとりに、興味のある分野と将来のことなど(大学院入試のような雰囲気になってしまったが)話してもらい、それぞれとてもしっかりした考えを持っていることに、感心した。四人が大学院進学を考えていて、分野は、教育、文学、社会学、日中比較文化とのこと、一人は日本の企業で働きたいと言う希望で、八月にはインターシップで日本に来るとのことであった。東大病院に、天皇が入院していると言ったら、天皇の近くにいると言うことで、感激された。
その後、「忍ばずの池」を経由して、アメ横を通って、御徒町で、遠慮していたが、居酒屋(土間土間)に入り、日本食らしきものに挑戦してもらった(焼き鳥も焼き魚も鍋も、美味しそうに食べていた) 。その後、新宿まで送ると言ったが、自力で帰れるというので、秋葉原別れた(無事に帰ってくれたことを願う) (結局、目的地の上野には辿り付けなかった。私らしいいい加減な案内であった)
中国の学生(特にエリート大学の学生)は、日本の一時代前の学生に近く、遊びやおしゃれよりは、学問や将来のことを考え、地道に勉強する態度が身についていると感じた。
神田の古本屋街や東京大学に興味を示し、そこに行った時嬉しそうにしているのを見て、現代の日本の学生との違いに愕然とした。「谷崎潤一郎」の本は私も若い頃読んだので知っていたが、学生が必死に探していた「額田の大君」のことは私は無知だし、「忍ばずの池」の由来を中国の学生から教えられる羽目になった。
東京を案内したのは私だが、教えられ得るものが多かったのは私の方であった。中国の学生に感謝。日中学生文化の比較をきちんとしたくなった。
投稿者: takeuchi
ライブのお知らせ
2012年2月10日(金)
~「Next Frontier vol.5」AO AKUA/COMEAROUND レコ発2マンライブ~
時間:open18:00/start19:00
料金:3,000円(1ドリンク込)
会場:南青山 MANDALA (銀座線、外苑前駅徒歩5分)
リンク:http://www.mandala.gr.jp/aoyama.html
出演:AO AKUA・COMEAROUND・and more
補足と、いただいたコメント
先の藤原新也の文章の転載で、一部抜いてしまったところ(傍線部分)があるので、補足しておく(重要なところかもしれないので)
<ひとつ良いことがあれば100の悪いことは帳消しに出来ると言うのが私の考えだからだ。逆に一つの悪いことは100の良いことを帳消しには出来ない。>
Mさんより次のようなコメントをいただいたので、紹介させていただく(文章の一部略。お許し下さい)
<2月6日の「楽天的に考える」を興味深く読ませていただきました。私は「どちらかと言えば楽天的な死生観を持っている」と言えると思います。背景には、曹洞宗の「無」という世界が、それとは相反し「自然崇拝・先祖崇拝(アニミズム)」というDNAも色濃く残っています。つまり「あの世はない」「霊魂は存在する」という矛盾が私の中で共存しているということです。
新也さんの「死ぬ間際には自分の人生の悪かったことは全部忘れ、いいことばかり思い出し、いい気分で死ぬであろう」に「そしてあの世から自分の子孫を見守り続けるであろう」という言葉を付け加えたいと思います。こう考えればいかなる人生も楽勝です。>
楽天的に考える
Positive Thinking と Negative Thinking という2つの考え方がある。現実をきちんと見なければいけないが、それとは別に、悲観的に考えるか、楽観的に考えるかの二者択一で言えば、楽観的に考える方が、いいのではないか。
そのようなことを考えていたら、同じことを、とても的確な比喩で藤原新也が書いていた(下記)。
自分の文章で書けなかったことは悔しいが、楽をして同じことを言えていいか。
<ひとつ良いことがあれば100の悪いことは帳消しに出来ると言うのが私の考えだからだ。(中略)
根っからの楽天的な性格ということも作用しているかも知れない。
私はときおりあのチンパンジーと似ているようなところがあると思う。
小学生以上の知能があるよく訓練されたチンパンジーに目のない人の顔を見せても、そこに目を書き入れることはなく、いろいろなものを書き加えるという実験を見たことがある。
だが人間はそうではない。
目のない人間の顔を見せると必ずと言っていいほど、欠けた目を描く。
つまり人間という動物は欠けたものに目が行くわけだ。
あまり前向きとは言えない。
私はどうやらチンパンジーと似ているようだ。(中略)
マイナスのことに目を向けない私はおめでたい男なのかも知れないと思う。
しかしそのようにして67年間前向きに生きて来れたのであり、これからもその性格は変わらないだろう。
そして死ぬ間際には自分の人生の悪かったことは全部忘れ、いいことばかり思い出し、いい気分で死ぬであろう。> (CATWALK,、2月2日より転載)。
教育原論Ⅱの試験問題候補
敬愛大学で担当している「教育原論Ⅱ」の学期末試験がもうすぐ(2月1日)である。この授業では教育のことを考えるのに役立つであろうことを、さまざまに話した。資料で配布したプリントも50枚(ページ)近くになると思う。学生がどこに焦点を絞っていいかわからず、勉強しないと困るので、あらかじめ問題の候補を出しておいた。それが以下である。
2012年 教育原論Ⅱ 問題 候補
1 現代日本の家庭教育の特徴はなにか。
2 家庭の教育力を高めるためには、何をすればよいか。
3 幼児期の特徴について説明しなさい。(幼児期の孤独など)
4 学校行事の機能について説明しなさい。
5 学校のもつ「権力」について説明しなさい(「内在的な権力」など)
6 競争と教育の関係について説明しなさい。
7 ボランティア活動と教育の関係について説明しなさい。
8 多様な文化を、教師はどのように扱えばよいか。
9 公立学校の役割は何か。
10 「レス ワース(よりひどくない)」の選択について、教育の例で説明しなさい。
11 からだとことばの関係について説明しなさい。
12 感性の教育や創造的な教育について説明しなさい。
13 規律の教育について説明しなさい。
14 西洋の教育の思想家の名前を、5名あげなさい。
どの問題を出そうか思案中である。一番やさしいのは14番、一番難しいのは10番ではないかと思っている。