仙台からの便り

先先月に「財団法人中央教育研究所」を定年で退職され、故郷の仙台に戻られた水沼文平さんから近況報告が届いた。相変わらず、骨のあるまた文学教養に充ちた報告である。ご了解を得て、掲載させていただく。

近況報告です。
新居に沿った県道263号線を6キロほど北上した泉区に宮城県立図書館や仙台泉プレミアムアウトレットがあります。友人の車で案内してもらいましたが、雑木林に囲まれた図書館はガラス張りのモダンな建物で書籍はもちろん郷土資料も充実していました。またアウトレットは多様な店舗があり老若男女でにぎわっていました。50年前は旧七北田村で山林や田畑があったところです。この大きな変化に驚いています。
今日の午前中、同じ友人の誘いで「仙台七夕祭り」を見てきました。店ごとの七夕飾りは画一的な吹き流しが主で、昔はたくさんあった「からくり」もほとんど見当たりませんでした。
5月の「青葉祭り」は伊達政宗の命日に由来する青葉神社の祭礼ですが、本来の意味を失い、スズメ踊りや何とか山車など、わあわあ騒ぐだけのものになっているようです。七夕も同様、短冊に願いごとを書くことは幼稚園や小学校だけの行事になっていると思われます。
お祭り騒ぎもけっこうですが、子どもたちの将来のために盛岡の「先人記念館」のようなものを作って欲しいものです。何人か偉人を上げて見ますが、大槻玄沢(蘭方医)、吉野作造(思想家)、井上成美(軍人)、佐藤忠良(彫刻家)、千葉周作(剣術家)、土井晩翠(詩人)、支倉常長(慶長遣欧使節)、林子平(経世論家)、原阿佐緒(歌人)、志賀潔(細菌学者)などの優れた人々を宮城県は生んでいます。
七夕を見物中、私が50年前に卒業した高校に属する生徒にチラシを渡されました。そのチラシは偏差値の高い何校かの「ナンバースクール文化祭」を案内するもので、エリート意識から来るのか「ナンバースクール」と明記する無神経さ・精神性の軽さ(謙譲心・思いやりの欠如)に変貌した七夕祭り、青葉祭り同様の失望を感じました。
このような変貌(変容)は多分全国的な傾向だと思いますが、この近況報告は長年故郷を離れ、故郷に幻想を持ち続けた今浦島の「たわごと」として受け止めていただければ幸いです。(水沼文平)