非常勤先(植草学園大学)の授業では、受講者に保育資格の修得を目指している学生が多いので、それに合わせて、「育児の日米比較」というテーマを、少し取り上げた(10月8日)。
資料は、ハルミ・ベフ『日本―文化人理学的入門』(教養文庫、1977年-一部添付)。書かれたのは、40年も前だが、日米の育児の違いを、実証的なデータにもとづき、鮮やかに描き出している。(その内容は次のようなものである)
アメリカの母親は、子どもに対して、言語反応と子どもの身体的活動を刺激する傾向がある。時間を決めた授乳を行い、泣いても抱くことをしない。アメリカの子どもは、一人で置いて置かれることが多い。そのため、子どもは、一人で情緒の安定をはからなければならず、個人主義の心性が幼い時から養われる。子どもは母親に対しては、肯定的(愛情の源)及び否定的(不安の源)双方の感情をもつ。つまり、二律背反的な(アンビバレントな感情を持つ。
一方、日本の母親は、言語活動は少なく、その代わりに赤ちゃんをなだめたり、あやしたりすることが多い。母子関係に不安をいだかせたりするような行為は、できるだけひかえられる。すなわち、罰を与えたり、子どもを一人ぼっちにしたり、見知らぬ他人に任せることは極力避ける。子どもがほしがる時に授乳し、抱いてほしときにいつでも抱く(松田道雄『育児の百科』岩波書店)。母親が子どもを直接叱責したり罰などを与えることを避け、学校の先生に叱ってもらったり、超自然的な制裁の脅威(お化け、鬼、悪魔)が来て,いうことを聞かない子を脅すよ、と諭す。
この子育ての日米比較は、観察・考察が古いものから来ているが、今聞いても納得できる部分が多い。戦後70年が経って、アメリカ的な子育てが日本にもスポック博士の育児書などを通して浸透しているにも関わらず(その後、日本的な子育てが見直された時期があったと思うが)、日本的なものは、いまだ残っているのであろう。この説明に対して、、学生は、次のような感想を寄せている(一部抜粋)
・日米比較が面白いと思った/ ・国柄がよく出ていた。/・日米の子育てで、このような違いがあると思うととても驚きました。/・私の母親は日本的子育てでした。私もアメリカ的子育てより日本的子育てをしたいと思いました。/・私は母親になった時も保育の現場でも日本的子育てをしていくと思う。/・私はたくさん抱いてずーと近くにいてあげたい。/・子どもとふれあうことは大いに大切だと思う。話せなくてもぬくもりから伝わるものがある。/・私はどちらもされていたと思う。/・子どもを一人置いておくなど、アメリカ的な子育ては少し怖いなと思いました。/ 日本でも授乳は時間を決めてしなければいけない。/・日本の母親が子ども中心の生活リズムになることは確かに子どもの不安を取り除くかもしれないが、母の心労は計り知れず、それを吐き出す場がなく、母子の依存的関係だけでは成り立たない。/・アメリカのように自立させるためには、抱っこしない方がいいとことがわかりました。/・アメリカ式がいいなやってみたいなと思いました。/・自分が子育てをするのなら日本7割、アメリカ3割くらいで育てたいです。・子育て場面によって、使い分けるのが重要だと思う。
IMG_20151009_0003(配布資料)