大学院生の頃、吉本隆明の著作には魅せられ、読みふけった時期があった。今も『吉本隆明全著作集」は、研究室の本棚に鎮座している。
「芥川龍之介の死」(『吉本隆明全著作集」7収録』)は、よく、社会階層・社会移動と文化の関係を説明する時に使わせてもらっている。
氏の生き方そして『丸山政男論』にあるように、優れた学問は、大学という制度の中にあるのではなく、大学外(野)にあるということを、身をもって示してくれたように思う。
今日(19日)の朝日新聞の朝刊に作家の高橋源一郎が、吉本隆明は「思想の『後ろ姿』を見せることのできる人だった」「彼の思想やことばや行動が、彼の、どんな暮らし、どんな生き方、どんな性格、どんな個人的な来歴や規律からやって来るのか、想像できるような気がした。どんな思想家も、結局は、ぼくたちの背後からけしかけるだけなのに、吉本さんだけは、ぼくたちの前で、ぼくたちに背中を見せ、ぼくたちの楯になろうとしているかのようだった」と述べている。同感である。
多くの影響を受けたものの一人として冥福を心よりお祈りしたい。