教育社会学のその特質を、簡単に言いますと、第1に客観性、第2に実証性、第3に脱イデオロギー(傍観者性)の3つあったように思います。当時の教育学が、主観的で、思弁的(哲学的)で、イデオロギー的であったことへの反動で、教育社会学はそのような特質を強調することで、自分たちの存在をアッピールしていったように思います。
教育のことを考えるとき、「こうあるべき」という理想や規範から考えるのではなく。「こうある」という現実から考えるという客観性や、どのような原因―結果の因果関係にあるのか、きちんとした自然科学に近い手続きで実証するという実証性や、運動や実践からは一歩距離を置くという脱イデオロギー性(傍観性)が、教育社会学の特質だと思います。
近年、この教育社会学の特質は、学問の確立とともに、薄れてきて、理想や規範の重視、主観性や感情の重視、政策提言や運動論への傾斜など、伝統的な教育学と変わらなくなってきていているようにも見えます。
昔、文部省と日教組の対立があった時代は、教育学は日教組より、教育社会学は文部省寄りの御用学問と揶揄されていましたが、今、最も政府の教育方針を批判しているのは、教育社会学の研究者になっています。これは、教育社会学の学問的特質は変わらないのに、世の教育風潮の方が、変わってきていると、教育社会学の研究者は考えています。
子どもや青年、そして学校のことを考えると時、その時の集団や制度や文化的なものがどうあるということが、子ども、青年、学校に大きな影響を及ぼしますので、集団や組織や制度や文化を扱う、社会学的視点は、とても重要になると思います。学校制度などは、政府の考えで、人為的に簡単に変えられるものですが、その制度変更が、日本全体に行き渡り、子どもたちや時の教育に大きな影響を及ぼします。また、教育の実際の過程は、教育制度、組織、集団のあり方と人の意識や心理や行動との相互作用によって進行していくように思います。そのダイナミズムを解明するのは教育社会学です