学生文化の変遷

昨日のFD研修会では、学生文化の変遷を、いつも話す内容だが、「○○さんの一日」というイラストや文章からの考察で、次のように話した。

私の調べたことで、3つの時代を挙げてご紹介します。配付資料をご覧ください。最初に、「武蔵太郎君の一日」というのがあります。これは、学生が座る席と受講態度の関連を調べた調査の報告書作成の合宿中に、1人の学生がノートの切れ端に書いていたものです。マンガだけだとわかりにくいので、別の学生に、解説をつけてもらいました。これが、ちょうどこの時代(1980年代)の大学がレジャーランドといわれた学生の自画像だと思います。武蔵大学は中堅の大学ですので、当時の典型的な大学生像が描かれています。出席を取る授業だけに出て、あとは友人との話題の為にテレビを見たり、マージャンをやったり、コンパをやったり。そういう交友関係がとても大事だった時代の学生です。この頃、受験競争はかなり厳しい時代ですので、高校時代までは受験でみんな苦労してきて、また大学を卒業して企業に入れば、企業戦士として猛烈に働かなければいけないという時代です。ですから、大学4年間のつかの間のモラトリアムを楽しむ、大学時代はレジャーランドかもしれないけど、そこで人生の中の貴重な4年間を好きなことをして楽しむという時代でした。それがよく描かれていると思います。
一つ注目していただきたいのは、この絵を書いた学生も、またこの文章を書いた学生も、その学生時代の学生だということです。遊び呆けているように見えますが、こういうマンガを描いたり、こういう文章を書く力をこの時代の学生が持っていたということがわかります。
1990年代に入って、バブルの時代になり、学生たちがどのような生活を送っていたかは、上智大生が描いた「上智Hanakoさんの一日」をみればわかります。この「上智Hanakoさんの一日」は、豊かな社会の恩恵を受け、自分の義務(授業に出ること)は最低限に果たしながら、自分の好きなこと、好みに合うことをしたたかに遂行する新しい世代を示しています。上智大学の学生は、この時代に優雅な生活を送って、就職では一流企業に何社も楽々と内定をもらっていました。この後、バブルがはじけて、このような生活を送っていては、上智大学の学生といえども、企業には就職できないという時代が来ます。
最後に、最近のものでは、「敬愛太郎君、敬愛花子さんの一日」というものを、今勤めている敬愛大学のこども学科の1年生に、書いてもらいました。偏差値は決して高くはありませんが、「こども学科」ということで、小学校の教員をみんな目指していて、朝早くから起きて、授業に真面目に出席します。大変まじめな(そうでない学生も一部いますが)、生活を送っている様子が分かります。この学生たちにとって大学というのは、遊べるモラトリアム期間ではなく、とにかく資格(教員免許)を取って、教員採用試験に受かろうという、何かそういう必死さが1年生のときからあります。アルバイトもよくやっていて、夏休みに入る前に、「これから夏休みでいいね」と聞いたら、「とんでもない。夏休みは週5、6日間アルバイトで稼がなければ」ということを言っていました。経済的にもかなり苦しい時代の学生達です。経済が不況になり、大学時代がレジャーランドとかモラトリアムという期間というより、とにかく将来の仕事、キャリアに向けてきちんと勉強して資格を身に付けたいと必死です。