「続 自転車に乗って」   水沼文平

少年時代に身に着けたものは終生忘れないものである。
一つ目は水泳、広瀬川で犬かきを覚え現在はスロースイミングを楽しんでいる。二つ目は柔道、中高校時代は柔道漬けの日々を送った。東京で酔って転んだ時、仙台に戻って雪で滑って転んだ時、体に染み付いた「受け身」でことなきを得た。
三つ目は本題の自転車である。

信号待ちで止まっている時、お尻を後ろにずらし、左足裏の全体が地面につくようにして安定させる。スタートの前に右足の甲でペダルを持ち上げ水平にして発車に備える。その時右足のかかとをペダルの軸に乗せ足を休ませるのがポイントである。勢いがついたらペダルを逆回転させ速度を調整する。凹凸がある場所ではペダルに体重を乗せサドルからお尻を上げて衝撃を避ける。同様坂道を登る時もお尻を上げ身体を左右に大きく振り登攀力を高める。これらの動作は自転車乗りに再挑戦してすぐに蘇ったものではなく、操縦時間の経過と共に「ぎこちなさ」が減少し、体が自然に動くようになって初めて気づいたものである。

タイヤの空気圧だが前輪の空気圧を低くしていた。これは摩擦面を多くして当時の道路事情の悪さに対応したものと思われる。そういえば「虫ゴム」というバルブの付属品があった。これが劣化すると空気が自然に抜けてしまった。手動式ポンプで空気を入れ終わるとタイヤバルブの先端に唾をつけたのはどんな効果があったのだろうか。

高校時代、広瀬川を挟んで私立女子高があった。そこを通る時、制服の第二ボタンまで外し、足を大股にしてかかとでペダルを踏むのが「いかす」格好だと思っていた。
しかしながら女子高生は単に野蛮人としか見ていなかったであろうと今では納得できる。

自転車乗りの副次的な効果として、大腸か直腸に停滞していた便が心地よい振動に促され降下してくることである。便秘に悩んでいる人にも自転車乗りを是非お勧めしたい。

蛇足ながらこどもの頃に覚えた「ことば」は長い間使ってなくてもすぐに出てくるものである。友人たちと「純正仙台弁」で会話を楽しんでいる。