私の母の住んでいる千葉県市原市ちはら台は、今から4半世紀前に住宅公団が分譲した1戸建ての住宅地である。山林や原野を切り崩し整地し、そこに各ハウスメーカーが建て売りの住宅を建てた。まだバブルの絶頂期で、都心の住宅地が高くて手の届かない庶民が、駅から遠く不便を覚悟で、高い抽選倍率を経て、購入したものである。都心に近い浦安の新興住宅地(今回液状化の被害を多大に受けた場所)に比べ、3分の1くらいの値段だったと思う。
小奇麗だけど同じような感じの家が作られたことから、藤原新也は、それら郊外の新興住宅を「ショートケーキ・ハウス」と名付け、揶揄していたように思う。歴史も文化も個性もない家々という意味であろう。
それから4半世紀経過し、その住宅地はどのようになったのであろう。ひとつは、駅から遠く(バスで10分~15分)、交通は相変わらず不便で(千葉からの外房線は本数が少ない)、都会のような活気は見られない。もう一つは、計画的に植えられた樹木は大きくなり(綺麗な桜並木もある)、各家庭は庭にも趣向を凝らし、個性的な佇まいになっている。
住宅選びは、交通の便をとるか、環境をとるかの二者択一になっている(両方が得られるのは富裕層のみ)。今の若い人は後者をあまり選らばす、都心を選ぶようになっている。したがって、老若の住み分けが進行しているように思う。