ソーシャル・キャピタルと学校教育

「現代の教育課題を読み解く」の第14章に、新井郁男・上智大学名誉教授の「ソーシャル・キャピタル形成と生涯教育―コミュニティの再生に向けて」という興味深い論稿が掲載されている。そのソーシャル・キャピタルに関しては、下記のような説明がある。

<ソーシャル・キャピタルは物的な要素ではなく、relationships,すなわち人々の間の関係性に注目した用語として使われており、 社会関係資本と訳されている。すなわち、物ではなく人に注目した概念である。ソーシャル・キャ ビタルは、 個人と個人、あるいは集団と集団の関係性に着目したものであり、それは経済成長というより社会全体の維持発展の視点からで考えられて概念である。 教育との関連 でいうならは、 ソーシャル・キャ ヒタルは、個々の人の知識や技能の習得・向上だけでなく、人間関係力とでもいうべき能力の育成を重視した概念であり、社会のありかたとしては、 コミュニティの重要性 に注目した概念といって いいであろう。>

そこで、生成AIに、「ソーシャル・キャピタルの観点から、家庭、学校、地域社会、企業が、子どもや人間を育てる上で、どのような要素を備えればいいと思いますか?」と質問した。以下その回答を掲載する。

ChatGPT:ソーシャル・キャピタルの観点から、家庭、学校、地域社会、企業が子どもや人間を育てるために備えるべき要素を考えると、信頼・ネットワーク・規範の三つの柱が重要になります。これらが機能することで、個人だけでなく社会全体の維持発展が促されます。/1. 家庭の役割:①信頼の基盤と規範の形成―安定した信頼関係の構築:親子の信頼が、他者との関係を築く基礎となる。安心して挑戦できる環境を整えることが重要。②多様な人間関係の経験:親の友人や親戚との交流、異世代間の関係を通じて、社会的ネットワークの重要性を学ぶ。③倫理観や規範の伝達:「人に親切にする」「約束を守る」といった価値観を日常生活の中で身につける。/2. 学校の役割:①協働の経験とネットワークの形成―協力や対話の機会を増やす:グループ学習や課題解決型学習(PBL)を通じて、他者と協力する力を養う。②異なる背景の人との交流:地域の高齢者や企業との連携、留学生との交流など、多様な人々との関係性を経験させる。③学校全体での信頼関係の構築:先生と生徒、生徒同士が安心して意見を言える環境をつくる。/3. 地域社会の役割:①多様なつながりを提供―「顔の見える関係」を増やす:祭りやイベント、ボランティア活動を通じて、世代を超えたネットワークを築く。②学校との連携:地域の大人が学校行事や授業に関わることで、社会全体で子どもを育てる仕組みを作る。③安心して関われる場の提供:地域の図書館や公民館など、気軽に集まれる場所を充実させる。/4. 企業の役割:ソーシャル・キャピタルを活かした育成,①インターンシップや職場体験の提供:働く大人との接点を増やし、実社会のネットワークに触れる機会を作る。②ワークライフバランスの重視:家庭や地域活動に参加できる余裕を持たせることで、社員が社会関係資本を築きやすくする。③地域貢献活動の促進:企業が地域の学校や団体と連携し、社会の一員としての役割を果たす。/結論-ソーシャル・キャピタルを活かした社会を築くためには、信頼関係を基盤とし、多様な人々と協働しながら学び、貢献する場を増やすことが鍵になります。家庭・学校・地域・企業がそれぞれの役割を果たしながら連携することで、持続的な社会の発展と個人の成長が両立できるはずです。

Bing チャトの回答―ソーシャル・キャピタルの観点から、家庭、学校、地域社会、企業が子どもや人間を育てる上で重要な要素を考えると、以下の点が挙げられます:/家庭-信頼関係の構築:親と子どもとの間で信頼を築くことが、子どもの精神的な安定や自己肯定感の向上に繋がります。コミュニケーション:日常的な会話や対話を通じて、子どもの考えや感情を理解し、サポートすることが重要です。共同活動:家族で一緒に過ごす時間を大切にし、共同で活動を行うことで絆を深めます。/学校-協働学習:グループワークやプロジェクト型学習を通じて、他者との協力やコミュニケーション能力を育てます。関係構築:教師と生徒、また生徒同士の信頼関係を築くためのプログラムや活動を推進します。多様性の尊重:異なる背景や価値観を持つ人々との交流を通じて、包摂的な社会性を育てます。地域社会-コミュニティ活動:地域のイベントやボランティア活動に参加し、地域との繋がりを深めます。ネットワーキング:地域のリーダーやメンターと繋がりを持つことで、子どもや若者の成長をサポートします。公共施設の活用:図書館やコミュニティセンターなどの公共施設を活用し、学習や交流の場を提供します。/企業-インターンシップ:学生や若者に実際の職場体験を提供し、社会人としてのスキルやマナーを学ぶ機会を提供します。メンタリングプログラム:社員がメンターとして若者をサポートし、キャリアの助言や人間関係のアドバイスを提供します。社会貢献活動:地域社会との連携を深めるための社会貢献活動やボランティア活動を推進します。/これらの要素を組み合わせることで、ソーシャル・キャピタルを高め、より良い社会関係を築くことができるでしょう。

Deep seekの回答―ソーシャル・キャピタルの観点から、家庭、学校、地域社会、企業が子どもや人間を育てるためには、以下のような要素を備えることが重要です。/信頼関係の構築:-家庭、学校、地域社会、企業の各レベルで、メンバー間の信頼関係を築くことが必要です。特に子どもに対しては、周囲の大人たちが信頼できる存在であることが重要で、これが成長や発展を支える土台となります。/コミュニケーションの促進:-開かれたコミュニケーションが可能な環境を整えることが重要です。家庭内では親子間の対話を大切にし、学校や地域では異なる背景を持つ人々との交流を促進します。企業も、社員同士のオープンな対話を推奨することが、コミュニティを強化します。/支援と協力:-各構成要素は、それぞれが持つリソースを活用し、子どもや個人を支援するために協力し合うことが大切です。学校が地域社会との連携を強化し、地域のイベントに参加することで、子どもたちの社会参加を促進します。/多様性の尊重:-多様な価値観や背景を持つ人々が一緒に活動し、理解し合う場を提供することが重要です。特に学校や地域社会では、異なる文化や考え方に触れることで、子どもたちの視野が広がります。/教育機会の提供:-知識やスキルを習得できる機会を積極的に提供することが求められます。地域の学校や企業が連携して、ワークショップやボランティア活動などを通じて実践的な学びを提供することが重要です。/コミュニティの参加と帰属意識:家庭や学校、地域社会、企業が、子どもたちにコミュニティの一員であるという帰属意識を持たせることは重要です。地域イベントや学校行事に参加することで、子どもたちは自分が大切な存在であると感じることができ、社会的なつながりを築くことができます。/ポジティブなロールモデル:-大人たちが子どもたちにとっての模範となり、良い人間関係の築き方や社会的な責任感を示すことが重要です。特に教育者や職場の先輩は、子どもたちにとっての重要なロールモデルとなります。/これらの要素が組み合わさることで、ソーシャル・キャピタルが強化され、子どもたちが健全に成長し、社会に貢献する能力を持つ人間に育っていくことが期待されます。

学校におけるソーシャル・キャピタルの効果的戦略(Bingチャトの回答)

Q.What are effective strategies for building social capital in schools?

A. Building social capital in schools can significantly enhance the educational experience and community engagement. Here are some effective strategies:/1. Encourage Collaborative Learning  Group Projects: Facilitate group assignments that require students to work together, promoting teamwork and communication skills. /Peer Tutoring: Implement peer tutoring programs where students can help each other, fostering a sense of responsibility and cooperation./2. Foster Inclusive Environments Diversity and Inclusion Programs: Create programs that celebrate diverse backgrounds and encourage inclusivity among students.Anti-Bullying Campaigns: Implement anti-bullying initiatives to ensure a safe and supportive school environment./3. Promote Extracurricular Activities Clubs and Organizations: Encourage students to join or create clubs and organizations based on their interests, providing opportunities to build relationships outside the classroom./Sports Teams: Support participation in sports teams, which can help students develop teamwork and leadership skills.

『現代の教育課題を読み解く』(2024.12)の紹介 

 中央研究所研究報告N0103『現代の教育課題を読み解く』(中央教育研究所2024年12月25日)の内容は、目次(1ページから2ページ)に示されている(WEBで全文読める)。さらに「はじめに」及び第1章にその要約が示されてる。ここでは、「現代の教育課題」をどのように捉えているかという観点から、全体を紹介する。

 1 元東京教育研究所の主任研究員の村瀬光生氏から、長年の現場経験から、戦後の6334制は制度疲労をおこし立ちいかなくなっている、「小中一貫教育」(義務教育学校)、に関して、一度研究会に来ていただき話を聞き、記録に残した(第7章)/ 2 「令和の日本型学校教育」の答申で書かれていることが絶対的に正しいとされる中において、その前提となっている学年制や履修主義が、実際の現場では立ちいかなくなっていることを、複式学級をフィールドワークした遠藤宏美氏(宮崎大学准教授)が指摘している(第8章)/ 3 加藤幸次先生と新井郁男先生は、若い頃から国際通で知られ、国立教育研究所や文部省にいる時から、国際会議に出席され、英語を使って仕事をされてきた。その二人の先生が、これからの日本における英語教育に関する提言は、とても貴重なものである(2章、コラム)/ 4 教育社会学の研究業績には、教育のあり方を根本から問うもの、教育現象に関して、新しい視点を提示するものが多くある。それを紹介したのが、第15章(望月重信「教育のひとことから」から教育の課題追究へ)、第20章、「日本の子ども研究」(望月重信)である。/ 5 教育の実証研究の方法として、量的なアンケート調査だけでなく、エスノグラフィー、歴史研究、国際比較研究、構築主義、文化研究、文献研究などの方法のあることを、いくつかの事例をあげ、その方法を具体的に示した(第16章、武内清「教育社会学の文献(本)を読む」。 / 6 その他の、新しい方法として、「オートエスノグラフィー」(第19章、浜島幸司)、「ワードカフェ」(第6章、谷田川ルミ)の試みも、具体的に紹介している。/ 7 現在の教育問題で深刻、且つ重要な問題として、教員の離職率や休職率の高さ、児童生徒の生きづらさ、キャリア教育の問題がある。それぞれに関して、第10章(西本裕輝)、第9章(腰越滋)、第11章(大島真夫)が、教育社会学の実証的な方法で解明している。/ 8 現在、社会のグローバル化、国際化は大きな問題である。外国の教育の方法を観察して、日本の教育のあり方を再考することは、私達のプロジェクトでも過去に実施している。プロジェクトメンバーで、中国の上海と台湾の学校視察に行ったことがある。その時は、主に両国の英語教育の先進性に驚嘆した。外国のことは、短期の旅行者では、なかなか見えない部分(潜在的な部分)がある。長期にその国に住み現地の学生や人々の生活を観察している秦政春・同済大学客員教授が、中国人の行動規範や日本への留学に関して寄稿している(第13章)/ 9 さらに、現代は、外国(アジア地域)からの日本の学校への子どもや若者の入学数の増加が問題化している。それに対して、どのような対処が必要か、根本的なところから考える必要に迫られている。その教育現場に詳しい第1線の研究者・実践者の角替弘規・静岡県立大学教授が寄稿している(第12章)/ 10 ここ数年、人口減少、新型コロナの蔓延、学校への一人一台のPC端末の導入、社会の多様化に伴い、日本の教育全体、特に日本の公教育は危機に瀕しています。そのことの実態と再構築の方法に関して、詳しく、一人1台のPC端末の子どもへの配布と使用の実態と、総合や探求学習の実践も含めて書いたのが、馬居・米津の第4章と第5章である。それに関して、馬居氏は、「生活科と総合の原点の開示の形式をとりながら、一人一台PCと生成AIを駆使する公立学校が担うべき課題を提起する」と書いている。/ 11 今話題を集めている生成AIに、教育のことをいろいろ質問してみた。その解答から、生成AIは、正しいことを解答してくれるのかを、判定しようと試みた(第17章、武内清)

知り合いの研究者からは、下記のような感想(コメント)も寄せられている。

「ご書名通り教育課題を、教育社会学を軸足に置いて様々な切り口に即して、豪華な執筆陣によって鋭く読み解かれているご労作だと敬服します」(A氏)/ 「とても多くの先生方が書いておられるようで、読み応えがありそうです。また、多くの章が「1人称」で書かれていることも、大きな特徴と思います。大学教員の研究業績としては、学術論文みたいなものがどうしても重視されるのですが、本書にあるような論文とエッセイの中間みたいなようなものが、学部学生とかには、学術論文よりはるかにわかりやすい場合があります。卒論指導をやっていて、常々そういうことを感じておりました。本書をざっと拝読して思ったのは、そういうニーズにピタッとはまりそう、ということでした」(T氏)/ 「「自分英語のすすめ」「1人1台PCの課題」「小中一貫教育」「青少年の自尊感情」「生成AI」「ソーシャル・キャピタル」「日本の子ども」等々、日本の教育課題の今を多角的に取り上げ、それらに寄り添って論じられている、リアリティのある論集だと感じました。それにしても、沖縄の教育、特に学力問題は深刻ですね。沖縄の初等教育に関しては2014年以来下位を脱したと私はうかつにも思い込んでいましたが…。今の日本の教育課題、あらためて考えさせられました。」(I氏)/ 「A I との対話、やはり実話だったのですね。脅威を感じます。17章を読んで、「ここまで進化しているのか!」と驚きです。これからも、刺激的なお話をお聞かせくだされば有難いです。」(Mi氏)/ 「報告書を手にしての最初の印象は、先生のネットワークの多様性をあらためて感じさせられた。また内容的にも、興味深い章がいくつもありますので、これからじっくり拝読させていただこうと思っています。」(K)