2月20日の朝日新聞朝刊の社説に大学教員の常勤と非常勤に関して、下記のような記載があった。
<中教審では別途、社会のニーズ(オンライン授業等の増加―引用者)にあわせて新しい学部や学科を開設しやすくするため、教員配置の基準も緩める方向で検討が進んでいる。この見直しをめぐっても、教育レベルの低下を招く懸念がある。たとえば、人件費を減らすため専任の教員を減らし、かわりに多くの大学を掛け持ちする非常勤講師に授業を担わせる。そんな経営の合理化策に悪用されるようなことがあれば、本末転倒も甚だしい。>(2月20日 社説 「オンライン授業 教育の質下げぬ工夫を」)
それで2つのことが気になった。一つは、日本の大学の授業は非常勤の教員が担当する率が高く、それで安い費用で大学が運営されていること。昔ある大学で、開講科目の半数を常勤、半数を非常勤が担当し、それに支払う給与が10倍以上違う(非常勤の方が少ない)と聞いたことがある。常勤教員は授業だけをやっているわけではないが、それにしても大学の中核の授業の担当者に支払われる賃金の差が10倍とは大き過ぎる)。
この朝日の社説で気になるのは、(大学が教員の授業の対価として支払う金額が常勤と非常勤で違うことは確かであるにしろ)授業の質が、常勤教員の方が高く、非常勤教員の方が低いという前提で書かれているように感じたこと。
私の経験では、それは言えないし、かえって逆の場合が多いのではないかという気がする。一般に大学の授業への学生の満足度(授業の質と少し違うが)は、若い非常勤講師の方が、歳取った専任教員より高い。また、非常勤で教えるということは、身内ではない外で教えるということであり、外では身内にありがちな手抜きができず、準備をよくして一生懸命に教えるのが普通だと思う。低い給料で熱心に授業する多くの非常勤講師のお陰で、日本の大学教育の質は保たれているような気がする。