昔読んだ本の中に、家族力動論というものがあったと思う。それは社会学と精神医学の融合した理論で、家族は一つのシステムで、そのシステムの均衡を維持するために、メンバーの弱い部分に力が加わり、その弱いメンバーが犠牲になり、何とか家族の均衡が保たれる(崩壊しない)というものである。夫婦仲の悪い家族の幼い子どもが一時的な精神障害に陥り、その子を心配することで何とか家族が崩壊を免れるというものである。これは、社会学も構造機能主義が優勢な時代のものである。その後、社会学も静的均衡ではなく、動的な変化を説明する理論が求められ、この理論は廃れていったように思う。2020年1月24日のブログに書いたことだが、「レジリエンス」という言葉が、その後の動的な均衡を説明する理論の1つとして出てきたように思う。(下記に再録)
「(レジリエンスとは、)環境の変化に対して動的に応じていく適応能力のことである」「脆弱性とは、変化や刺激に対する敏感さを意味しており、環境の不規則な変化や悪化にいち早く気づける」「レジリエンスは、均衡状態に到達するための性質ではなく、発達成長する動的過程を促進するための性質である」「レジリエンスは、環境の変化に対して自らを変化させて対応する柔軟性にきわめて近い性能」「(レジリエンスが活かせる環境を構築するためには)子どもの潜在性に着目して、職場や環境が変わっても続けられる仕事につながるような能力を開発すべきである」「(レジリエンスの立場から)ケアする者がなすべきは、さまざまに変化する環境に対応しながら自分のニーズを満たせる力を獲得してもらうように、本人を支援することである」(河野哲也『境界の現象学』)
12月21日の日経新聞に「ガンに負けぬレジリエンス」という題で、精神科医の清水医師(がん研有明病院腫瘍精神科部長)の取り組みが紹介されていた。(下記添参照)がんの場合、精神的なことも大きく、「気にすることではない」と未来に積極的になりことが大切なのであろう。(韓国ドラマ「マイ・ディア・ミスター」でも主人公が同じようなことを言っていた)