文脈の大切さについて

話ことばでも書きことばでも、前後の文脈がわからないと何を言っているのかわからないことが多い。逆に言うと、前後の文脈がわかっていれば、語られた内容が、明確に聞き取れないあるいは読み取れなくても理解できる場合がある。このように前後の文脈を知っているかどうかということは重要なことである。

外国語の理解の場合は、それが一層顕著である。語られたあるいは書かれた外国語の内容が理解できるかどうかは、個人の語学力に帰されることが多いが、そうではなく、文脈の理解の有無による場合も多い。したがって個人の語学力を判定するのであれば、前後の文脈によらない論理的な内容の理解を問うべきであろう。

実際の大学入試の問題に、映画やドラマの中の会話を出す大学があると聞く。きっとそれは出題者の心を動かされた映画やドラマを使っているのであろうが、前後の文脈を無視して、映画やドラマのある部分を切り取り、そこの会話を穴埋めさせても、それは正しい語学力の判定にはならないのではないか(このようなことをするのは外国人教師が多いのかもしれない)。

「(それは)標準英語から外れている表現があったり、話の途中から出してくる上に、そもそも映像がないので内容がよく分からなかったりで、解答する側(受験生)からすると迷惑なタイプの問題です。解答の客観的根拠も出しにくい」という専門家の声も聞こえてくる。文脈を大切にしてほしいものである。このような問題を出すのなら、その前後の文脈をきちんと説明する必要があろう。一般に国語の問題で、長い文章が出題されるのは、文脈を大切にしているからであろう。