教育原論(第12回) 2019年 7月5日 ジェンダーと教育 講義メモ

まず、前回のリアクション見てください。教師について(その2)ということで、教師の多忙化とか、文部科学省のチーム学校といういろいろな人を学校に入れる試みを説明しました。ただ、教師の多忙化や大変さはあまり変わらないようで、皆さんも教職に就くのなら相当の覚悟が必要です。ただ、それは個人が努力するとか耐えるとかすればいいという「自己責任論」で考えるのではなく、周囲の人との連携や社会や学校の変革も考えるということも大事です。

今、学校だけでなく就労の働く場がかなり過酷になっていると思います。今大手のコンビニチエーン店のフランチャイズ契約がとてもひどくて、コンビニの店長が24時間休みもなく、利益をほとんど本部にもっていかれ、無償で働かされるシステムになっているということをyou tubeで見ました。日本の中堅や底辺で働いている人がきちんとしたいい仕事をしているにも関わらず、その人たちを痛めつけ、大企業や上の人ばかりが得をする仕組みになっている、日本はこれから大丈夫なのか、という内容でした。

今日のテーマは「ジェンダーと教育」です。テキスト「教育の基礎と展開」第9章参照してください。

ジェンダーとは何か(定義)。テキスト121ページや資料Bにも説明がありますので、それらを参照してください。ジェンダーは、生物学的なものではなく、社会的なものだということです。ただ、私たちは生物学的な決定論を信じているところがありますし、生物学的なものと社会的なものは関係していますので、なかなか理解が難しいと思います。カタツムリは両性具有で、人間も最初は全てメスで、オスとメスというのは、生物学的にはそんなに大きく違っているものではないのに、社会的には男と女で大きく2分されているということのようです。ただ最近になって、性の多様性についてはいろいろ認められるようになっていますので、教師を目指す皆さんも伝統的な考えに捕らわれることなく、新しい考えを取り入れていただきたいと思います。

そのことは、資料Aの上野千鶴子が「セックスとジンダーのずれ」で、社会学的な考えを明確に述べています。生まれた時、性の判定を間違えられ、思春期になってそのことに気が付いた時、その後の人生をどちらの性で生きていくのがいいのかという問いがたてられています。普通、生物学的な性に合わせれば自然でいいと考えがちですが、実際はその逆で。性転換の手術をしてでも、思春期までに形成された社会的心理的な意識(性自認)の方に合わせた方が生きやすいという例が多いと説明されています。

学校において、男女で教えられることや指導の仕方が違うことはありますか。カリキュラム、部活動、生徒会活動、進路指導について考えてください。資料Bの木村涼子氏の文章(「ジェンダーの視点から現代社会を読む」)を読むと、現在カリキュラムは男女平等になっていますが、その内容は男性優位であったり、教師が男子の生徒に高い期待をかけ、女子の進路は文系のほどほどがいいと考え指導してしまう様子が書かれています。このように感じたことはありませんか。日本の社会で、なぜ上位の地位を男性が占め、女性が少ないのでしょうか。たとえば、女性校長は少ない(テキスト127ページ、図9-1)。その理由は?、女性の能力が低い、女性にリーダーシップ能力がない、女性は子どもを産む、子育てに忙しいなどがあるのでしょうか。女性にはガラスの天井があると言われていますが、その理由を考えてください。

女性は、どのような生き方や考え方をすれば、男性と同等となり、力を発揮できるのでしょうか。小倉千加子『結婚の条件』(2003年)は、16年前の若い人の考えを紹介していますが、どう思いますが? 少し古い感じはしますね、今は、もう少し男女平等、堅実になっているように思います。

マドンナという歌手について皆さんどのように思っていますが、私は最初品がないなと思い聴きもしなかったのですが、私の友人の山本雄二さんが訳した本『抵抗の快楽』(J.フィクス著)の中に、マドンナに関するカルチュラル・スタディーズの優れた分析があり、こんな人だったのかとびっくりしました。男性に従う弱い女性の生き方の真逆の生き方をしている人で、「男性社会の既成の記号表現を使いながら男性中心の記号内容を拒絶し、あざけり笑うことで、女性も自分の力で自分らしく生きることができるのだということを実証してみせているのである」と描かれています(マドンナのマティリアル・ガールとライク・ア・バージンをyou tubeで見てもらう)。皆さんどう思うか、聞いてみたいと思いました。

今日は、自分のリアクションを男性は女性に、女性は男性に見てもらい、少しジェンダーについて話し合ってください。(以下、リアクションと配布プリント)

教育原論(第12回)リアクション   2019年 7月5日        

テーマ ジェンダーと教育 (テキスト「教育の基礎と展開」第9章参照)1 前回のリアクションを読んでの感想 2 ジェンダーとは何か(定義)(テキスト121ページ、他 参照)3「セックスとジェンダーのずれ」(A 上野千鶴子「セックスとジンダーのずれ」)の要点をまとめなさい。4 学校において、男女で教えられることや指導の仕方が違うことはありますか(カリキュラム、部活動、生徒会活動、進路)(B 木村論文参照)5 日本の社会で、なぜ上位の地位を男性が占め、女性が少ないのでしょうか。 たとえば、女性校長は少ない(テキスト127ページ、図9-1)6 女性は、どのような生き方や考え方をすれば、男性と同等となり、力を発揮できるのでしょうか。(C 小倉千加子、D マドンナ、他)7 異性の人のコメントをもらう(     )

追記 I氏より下記のサイトの紹介があった。日本で女性の研究者の割合が欧米の半分以下とのこと。<女性の研究者の割合は、イギリスで35.4%、アメリカ34.3%であるなか、日本は15.3%と半分以下で、韓国の18.9%よりも少ない。教授職より上位職ではおよそ10%。女性研究者はなぜここまで少ないのか。以下が女性研究者が少ない理由トップ3、「家庭との両立の難しさ」「育児期間からの復帰の難しさ」「職場環境」>(https://gendai.ismedia.jp/articles/-/65490?page=5

追記 「ジェンダーの社会学」は社会学が専門の学生に半期をかけて行われることが多い。上記のような話を社会学が専門ではない学生(それも1年生)に、1回でして、どの程度の理解が得られるのかと疑問に思われる人もいると思う。その実際は、その時書かせたリアクションを見ていただくとわかる。学生の理解度は高い。