教育の効果

教育の効果はすぐ現れず、何年か後に現れるように思う。しかしその何年か後の教育の効果を計る試みはあまりなされていない。一人の人の成長の過程を追いかけるパネル調査は少しはなされているが、莫大な手間暇と費用がかかるため日本ではなされることは少ない。

もう少し身近なところでは、家庭の中で子どもをこのように教育したところその効果はこのように現れた(例えば、このような家庭教育が東大に子どもを入れるのに役立った等)などの実践報告を目にすることはある。一方、学校教育や大学教育の効果に関して、上級学校への進学率や企業への就職率などのデータは報告されるが教育の中身の効果などが長期的なデータから報告されることは少ない。著名人の出身大学が明記されることが多い。これは暗に大学教育の効果を示している。ただ、これも本人の資質や努力のたまものか、家庭教育のせいか、小中高あるいは大学の教育の効果なのか、正確には識別できない。

私たち大学教師からすると、自分の教えた学生が、大学卒業の職業や職場でどのような活躍をして、その活躍に自分の教育が何ほどかの貢献をなし得たのか知りたいと思うことがある(多分大した貢献をしていないので、現実を知らない方がいいのかもしれないが)。 上智大学に在職中に、教育学科の同僚で教育哲学が専門の増渕幸男教授がいらして、増渕教授の学識と人柄と教育のせいだと思うが、優秀でユニークな学生がゼミに集まっていた。分野が違うのでどのような内容の講義やゼミなのかわからなかったが、大学卒業に、社会でめざましい活躍を人が多く輩出された。たとえば、2006年ミスユニーバース日本代表(世界2位)の知花くららさん、最近フォトジャーナリストで注目されている安田菜津紀さん(yasudanatsuki.com/)。この二人の活躍の内容は教育哲学的なものを含んでいるので、多分増渕教授の教育や指導の成果ということはあると思う。この二人も私の「教育社会学Ⅰ」の授業も必修で履修していたが、どこかで、教育社会学的なことが役立っていれば嬉しい。このようなことを、6月2日の朝日新聞GLOBE,No.218で安田さんが大きく取り上げられていたので思った。