今日(1月26日)は、この教育課程論の最後の授業なので、まとめと補足を行います。次のような5つのことを話します。
最初に、これまでのリアクションをお返しします。この授業では、最初から最後まで、各回とも講義内容に即した質問の答えを皆さんが書くという形(リアクションの記入)で進めてきました。これがよかったかどうかわからないのですが、私の話を自由に聞くというよりは、私が発する質問のような観点で話しを聞いてくださいと指示するもので、焦点は絞りやすかったと思いますが、私に誘導されているようで自由度が少なかったかもしれません。
前回の講義のリアクションに関しても、代表的な例をプリントで示しました。前回の講義の内容を思い出し、自分のリアクションと比べ、理解の足りなかった点を補ってください。
次にこれまでのリアクションを見ながら、この半年間で学んだことを振り返って下さい。とりわけ、1回から3回までが、教育課程の中核の部分を扱っています。つまり
第1回(9月29日) 教育課程の定義、
第2回(10月6日) 学習指導要領の変遷、
第3回(10月13日)現代求められる能力―生きる力、キーコンピテンシー、21世紀型能力。
それ以外は、教育課程関連ということで、いろいろなことを取り上げました。
時代の変化と教育(10月27日)、社会格差と教育(11月10日)、青年期の社会学(11月17日),ジェンダーと教育(11月21日)、多文化教育 (12月1日、8日、15日)、デジタル教科書(12月22日)、教員採用試験他(1月19日)です。
第3に補足で、3つのことを説明したいと思います。
1つは、教育課程の歴史的変遷の補足です。学習指導要領の歴史的変遷に関しては、第2回の時に説明していますが、もう少し広い教育についての考え方の歴史的変遷です。大きく2つの流れがあり、一つは生活との結びつきを考えた教育内容、もう一つは科学との結びつきを考えた教育内容です。前者は、生活綴り方運動が一つの典型で、もう一つは仮説実験授業というものが、配布した資料では例に挙がっています。「山びこ学校」(無着成恭)や水に木片を浮かべた時の重さの変化に関する実験授業の例などが説明されています。
現在は文部科学省の定めた学習指導要領に従えばいいという風潮になっていますが、かっては教師はいろいろ工夫して、地域や子どもの特性に根ざしたものや、科学的な実験(仮説―実験―理論化)を行い、教育課程が編成されていたという歴史があり、それらは今も大事だということを理解していただきたいと思います。
補足の2つ目は、東京都の教育委委員会が、これから教職をめざす学生用につくっているパンフレットがあり、その中から重要なところだけ、抜粋しましたので見てください。「学校の一日」「教科指導」「大学生活の送り方(そこで身に付けるべきもの)」「教員採用試験」のことが、丁寧に説明されています。小学校の教育現場やそこで教師に要求される資質や能力、その為に大学生活をどのように送ればいいかということまで書かれています。教育委員会が学生生活の送り方と獲得すべき能力(課題解決能力、コミュニケーション能力、統率力、組織貢献力)まで言及するのは少しおせっかいという気もしますが、参考にはなるでしょう。
補足の3つ目は、教育方法について書かれたもので、長年の教師の経験から生み出されたものです。教室での「4分6の構え」とか教室での「立つべき位置」とか「机間巡視のコース」とか具体的な方法が書かれています。教育方法は教育内容とも密接に結びついています。(資料:大西忠治『授業つくりの上達法』)。
教育というのは、教育実践と結びついているので、理論的にすっきりとせず、学問としてもあまり発達していなくて、素人でもわかりできると思われ、学問の社会的地位は低いのですが、実は教育は大変複雑で、教育学は奥深いものだということを理解し、皆さんはそのような分野を学んでいることに誇りをもってほしいと思います。