ジェンダーの社会学

社会学や教育社会学の分野の研究の一つに、「ジェンダーの社会学」がある。
日本のこの分野の第1人者は上野千鶴子で、私も氏の本を何冊も読み、講演も3回ほど聞きに行った。またこの分野の本は、かなり読んだ。授業でその内容を紹介することがある。
社会学や教育社会学の立場は、性やジェンダーは生物学的なものより社会的なものが重要で、人や社会がそこを知って変えれば、男女平等は達成されるというものである。
生まれた時、性別を間違えて判定され、思春期になるまでそれに気づかず育てられ、思春期にその間違いが判明した後、その後の人生をどちらの性で生きるかを考えた時、思春期に判明した生物学的な性より、それまで育てられ自分も思い込んでいた社会的な性の方に従った方が、アイデンティティの危機もなくスムーズな人生を歩めるという多くの例を、上野千鶴子は紹介している。img_20161121_0001
幼稚園や保育園で、保育士が「男の子、女の子」という言葉を頻繁に使い、子どもに男女の区別をつけるような扱いをすると、子どもはその影響を受け、性自認意識が高まるという研究もある。子どもの半分に分け、手洗いに行かせるとき、「男の子は先に手を洗い、その後女の子が洗いなさい」というより、「イチゴ組(男女混合の班)とメロン組の人が先に手を洗いに行きなさい」といった方が、性差別を生まないという実践も報告されている。
テレビコマーシャルの性により偏り(「あなた作る人、私食べる人」他)は、これまで上野千鶴子の研究(『セクシーギャルの大研究』)はじめ多くで指摘されてきたので、今ではほとんどなくなっている。
教科書の記載内容も、男性優位で女性軽視という傾向は、日本弁護士会他から厳しく指摘され、かなり改善されている(歴史上の人物では、男性中心は否めないが)。

ジェンダーの問題は、まだわからない部分も多いと思う。また、「せっかく男女という違う性があり、その為人生に色が添えられ、楽しいことがたくさんあるのに、それを無くそうとするジェンダー論は好きでない」という素朴な疑問もある。

今日(11月19日)の朝日新聞朝刊には、「今さら聞けない」という欄に「性別」という題で、「性が決まる仕組みー人の体の『原型』は女性」という記事が載っていた。生物学的に興味深いことが書かれており、社会学や教育社会学の立場からも学ぶべきことが多くあると感じた。(一部転載、全文は添付参照)

< 胎児は初め、男性でも女性でもありません。最初の分かれ道は、性腺が精巣か卵巣のどちらになるか。Y染色体があると受精後7週目ごろから精巣に変わります。
精巣は精子を作る器官ですが、胎児では、体を男性化させるホルモンを出す働きが大切です。これによって、精子がたまったり、通ったりする器官が発達し、子宮や卵管の元になる器官は消えてゆきます。腹部にある精巣は股間に移り、外性器も男性型になります。
Y染色体がないと、一連の変化が起きません。性腺は卵巣になり、卵巣はホルモンを出すことがなく、子宮や卵管が発達して、外性器は女性型になります。このため、人の体の「原型」は女性とも言われます。 こうした過程で支障があると、性の不一致が生じます。>(朝日新聞2016年11月19日より一部転載,以下添付参照)

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