退職後の日々をどのように過ごせばいいのか高齢者世代には深刻な問題である。
私の周囲には、まだ勤めている人、研究を続けている人、放送大学で学ぶ人、旅行する人、スポーツクラブに通う人、卓球をする人、自動車の手入れをする人、散歩する人、犬の散歩をする人、買い物をする人、庭いじりをする人、病院に通う人などいろいろだ。
退職して暇ができたら、好きなことをして毎日楽しく過ごせるというのは、幻想であろう。E.フロムの言うように、自由は「〜への自由」ではなく、「〜からの自由」なのだから.「〜」のない高齢者世代には、自由(開放感)はない。
今日の朝日新聞には、73歳の高齢者(男性)が、その生活ぶりと心情を的確に書いていた。共感した人も多かったのではないか
退職後の時間潰し
< 退職後は、趣味がない、運動をするほどの体力はない、草を抜くほどの庭もない、旅行する金も、ちょっとの金を稼ぐ技術もない。ないないづくしだ。
仕方なく時間潰しに散歩をするが、不審者と思われないように、娘さんとも、幼い子どもとも目を合わせないようにしている。気楽な散歩にも気を使う。
図書館は空調設備が整っていて、ありがたい。ただ、お目当ての読み物が重なると早い者勝ち。なかなか順番が回ってこないのがつらい。もともと静かに読書をするところで、話し合う知人が増えるわけではない。
家でのひとり遊びはローカル紙の朝・夕刊と全国紙を読むこと。投稿欄は採用されなくても楽しい。もう一紙購読したいが、年金額からは、現状の2紙が最高のぜいたくだ。
月曜日は図書館が休み。新聞の休刊日が重なることもある。休刊日は休肝日としたいが、出かける用事もないと実に一日が長い。ストレスがたまり、結果として2合酒になる。
ぬれ落ち葉にならないか、妻の邪魔にならないか、気がかりだ。そんなことを思いながら、ふといつもの図書館で周りを見回すと、私と似た感じの人が目に付く。>
(朝日新聞、2016年4月3日、朝刊より転載)