少し前の本だが、村上春樹の『約束された場所で』(1998年、文芸春秋)を読んだ。これは、オウム真理教の信者や元信者にインタビューした記録の本である。いろいろ衝撃的を受ける内容だった。
第1に、村上春樹という有名な小説家が、インタビュー記録のような地味な仕事をよくやったものだと感心する。
第2に、オウム真理教の信者の多くが特別の人でなく、普通の人たちで、自分の生き方などを哲学的に考える、言い換えれば少し突き詰めて考える人で、真面目な研究者などによくあるタイプであるということ(理系の高学歴者に多い)。
第3に、育った家庭に幾分問題があった人が多く、学校や一般社会に少し不適応で(「一般社会の価値観とはもともと完全にずれている」とも村上春樹は書いている)、現世の功利より精神の修養に価値を置く人で、少しバランス感覚を欠く人たちであること。
第4に、このような人たちを引き受ける受け皿を、社会が用意しないといけないということ(対談で、河合隼雄もその点を強調していた)。
世間からかなり特異だと思われている人が、実はそんな特異ではなく、誰でもそのような資質をもっているし、誰でもそう成り得るということが、衝撃的であった。