1 教職概論は、文字通り教職に関して、その概要を学ぶ分野である。
2 それは、学校の教師になる(教職に就く)為に必要な内容(知識)であり、同時に、教職や教育に関わる人(教育委員会、教育関係者、親等)にとっても必要な知識(教養)である。
3 教員採用試験の「教職教養」の分野において、「憲法」「教育原理(論)」「教育課程」「教育行政」「教育心理学」等と並んで、この分野からも出題される。
4 教職は、私的な塾やお稽古の教師などとは違い、公(国家)が認定した教員資格であり、公〔国家〕の定める法律(憲法、教育基本法、学校教育法、他)に基づいた職務行動が要求される。教職に関連するこれらの法規に関する理解が求められる。
5 教員採用試験は、都道府県ごとに行われる。求められる教員像に関しては、国(文部科学省、中教審答申等)が提示するものと、さらにそれを具体化し、地域に実情に合わせた各都道府県の教育委員会の提示するものがある。教員採用試験を受けるものは、文部科学省や各都道府県の教育委員会のHPなどで調べ、理解しておく必要がある(東京都教育委員会のように冊子を発行しているところもあるー配布済み)
6 教員の児童・生徒に対する指導には、大きく教科指導と生徒指導の2つががある。前者の為に、教師は、各教科の知識と指導法を身につけ、児童・生徒が各教科を十分に学べるような実力を身につけなければならない。また後者の為に、教師は、児童・生徒の模範となり、児童。生徒の社会化に寄与するような人格、行動様式、教育技術(コミニュケーション力、集団力学等)を身につけなければならない。
7 教師(教職に就く多く人)は、学校という公の組織に属し、その組織の規則に従い行動することが期待される。したがって、教育委員会の仕組みや管理職の権限、校務分掌等の学校組織の特質を理解しておくことが必要である。また、学校組織の中で、組織人として生きる人間関係能力も養う必要がある。後者に関しては、大学での様々な体験(キャンパスライフ)が役立つであろう。
8 学校は地域社会の中にあって、地域の人や児童・生徒の親との関係も大切である。教師は社会性を身につけ、常識ある行動をとる必要がある。「モンスターペアレンツ」の出現に対しては、適切な知識と技術を持って対処する必要がある。
9 教員採用試験に受かり教職に着けば、後は自動的に教師としての仕事が遂行できるわけではない、教師は学び続け、知識や技術の向上をめざさなければならない。教師の研修制度が公に用意されている。自己研修も大事である。
10 教職には、フォーマルな側面だけでなく、インフォーマル側面もある。それは、教育目標があいまいで、具体的な教育現場は、教師の自由裁量に任される部分も多いせいでもある。教師の人柄や思想や力量や考え方によって、実際の教育や指導が違っている。教師の人柄や実力が問われる所以である。
11 教育や教職には長い歴史がある。古今東西の教育思想、教育理論、教育実践、過去の教師像に学び自分の教師としての力量や深さや幅を広げる必要がある。
12 教師を描いた文芸作品やマンガなど、そこから学べることも多くある。教師の隠れた側面やホンネ部分を暴露し、教師とは何かを、根底から考える材料になる。(「二十四の瞳」「GTO」「ハレンチ学園」他)
13 外国の教育や教師のあり方、あるいは教育方法を知り、日本のそれと比較することは、教育や教師に関する知識や知見を深めることになる(比較教育的視点)。また、現代のグローバル化した社会においた、教育の国際化、異文化間接触は進んでいる。多文化教育、異文化間教育の視点を学び、海外子女問題、帰国子女問題、ニュカマーの教育などに対処する必要がある。
14 情報化社会の中で、情報機器の適切な取り扱いのできる教師が求められている。デジタル教科書、インターネット、ケータイの取り扱いが問われている。
15 社会規範の揺れ動く時代にあって、教師の道徳意識、マナ―意識は大事になっている。児童。生徒の模範となると同時に、その指導が大切になっている。
16 教育は、政治、経済、社会、文化、科学など様々な分野と密接な関係がある。 教育とそれらの分野との関係を日頃から学び、視野を広げることは教師として必要である。児童・生徒は、教師の広い視野から学び、社会化される。
このように、教職には、幅広い知識と技術と実践力が要求される。