今回のセミナーに参加して感心したことの一つに、中国の学生の優秀さがある。
一つの部会の発表は、中国の院生と学生によってなされていた。そこでは、しっかりした日本語で、かなり高度な内容の報告がなされていた。 その発表テーマは、次のようなものである。
「推理と恐怖美―谷崎潤一郎の『途上』を中心に」
「自然の鎮魂曲―深沢七郎の「笛吹川」のテキスト分析」
「日本近代文学における『ハムレット』の受容―太宰治の『新ハムレット』を中心にー」
「日本近代文学における変身物語―動物変身を中心に」
「額田王の生身の実態について」
中国の学生が、今の日本の大学生や院生が読んでいないような日本の小説、文学を読みこなし、それに論理的、感覚的な考察を加えているのは、驚きであった。
そのような洗練された分析が、中国の学生によって、しかも日本に行ったことのない学生が、中国の大学の日本語教育だけで出来てしまうというのには、心底感心した。
このような高度な考察が出来るのは、中国の学生の優秀性と教育の卓越性の他に、中国と日本の文化の共通性(中国文化の日本への影響)が、底流としてあることも感じた。欧米の学生では、ここまで日本文学への理解は進まないであろう。 中国の学生が日本語や日本の文学や日本文化を学ぶ意義を感じた。