学会ニュースに、下記のような文章を書いた。(5月30日発行)
「誕生期の『児童文化』活動では、大人も子どもも関係なく、ただひたすら童謡や童話という名の文化を共に楽しむことに喜びを見出していた」「子どもの生命が自然や社会の事物の生命と相互に交渉をもつ体験のなかで自らの生活を創造していった」「『児童文化』という用語が誕生直後にもっていた純粋な文化活動としてのダイナミズムが次第に失われた」
上記は、会員の加藤理氏の「児童文化」に関する叙述(『消費社会と子どもの文化』学文社、2010年)からの引用であるが、学会についても、同様なことが言えるのかもしれない。
本学会のホームページの「設立の目的」の項をみると、学会発足当時の会員の熱気が伝わってくる。また、子ども社会学会を立ちあげた中心メンバーが何を考えていたかがよくわかる。
「子どもの文化創造という視点」(藤本浩之輔)、「子どもの生活を子どもの論理でとらえる必要性」(深谷昌志)、「子ども研究という点での研究交流」(片岡徳雄、森彬)、「子ども相互や子どもと社会とのかかわり」(住田)。
そして、「日本の子ども社会のもつ様々な問題状況を実証的にかつ理論的に究明すること目的とする」としながらも、「その研究方法は、きわめて学際的なものになるとともに、理論的研究のみならず実践的、臨床的な、アクチャルな研究をも含むことが期待されます」
とうたっている。
学会が創立され、20年近く経つと、学会の組織は整備され、秩序だった公平な運営がなされるようになっている。その一方で、学会発足当時にあった初心、つまり子どもの創造活動という視点、子どもの文化や社会を共に楽しむ喜びなどが、失われて来ているのかもしれないと感じる。
情報化、消費社会化、知識基盤社会化、官僚化がすすむ中で、「古き良き」時代に戻ることはできない。しかし、学会20周年を機に、初心を思い出し、これまでの経緯を検証し、未来を俯瞰することも必要であろう。