教育研究では、初等中等教育に関する研究は、法律や制度や組織や集団や文化の特質のみならず、カリキュラム(教育内容)や授業の方法や児童・生徒の実態やその指導に至るまで、多くの研究や実践の積み重ねがある。もうこれ以上研究することがないくらいである。それに比して、大学、短大、専門学校など高等教育の分野は、高等教育機関やその学生数の増加は比較的最近のことということもあり、研究の蓄積はまだ多くない。高等教育に関する学会(日本高等教育学会、大学教育学会、初年次教育学会等)がここ20~30年の間にいくつもできて研究が進んでいるが、それでもまだ解明されていない部分は多い。
中央教育審議会の「大学分科会 質保証システム部会」のサイト(https://www.mext.go.jp/kaigisiryo/mext_00173.html)を見ると、そこで議論している内容が載っている。その中の【参考資料3 中央教育審議会大学分科会質保証システム部会基礎資料 (PDF】は、日本の高等教育の推移や統計や主な高等教育に関する答申が載っていて、とても便利である。
本日(1月25日)の会議(第7回)では小林雅之氏(日本高等教育学会会長・桜美林大学教授)が「学生調査を活用した質保証、情報公表について」という題で報告をしている。その報告の資料も掲載されている。その最後には下記のようなことが書かれている。
学生調査と大学の情報公表と大学の質保証のあり方/ ベンチマーキングの必要性と可能 全国レベル(国際レベル)、中間組織レベル、大学レベルの学生調査と情報収集・公表、レベル間の協働、データ共有の重要性/ 全国学生調査など標準的な学生調査の活用/ データコンソーシアムの必要性/ データベースの創設と活用 例 学校基本調査、大学ポートレート/ 大学情報の公表項目の拡大調査とデータベースのフィードバックの確立
大学の質保証の為には、各大学の研究や教育に関するデータや学生調査のデータを公開しそのデータの検証が必要。学生調査の結果を大学教育の質保証の為に使う必要がある。そのようなことはアメリカの大学では進んでいるが、日本ではほとんどなされていないとのこと。国公立大学のデータは学校基本調査で公表されているが、私立大学のデータは公表されていないせいも大きいとのこと。日本の高等教育には遅れがみられる。
追記 1 上記の中央教育審議会の「大学分科会質保証システム部会」の会議の様子はYou Tube で生配信されていて、少し視聴することができた。このような国の高等教育政策の方向を決める重要な会議を、誰もが同時配信で視聴できるとは知らなかったのでびっくり。視聴数は150名くらいだったので知らない人も多いのであろう。他の会議も視聴してみたい。
追記2 各大学の研究の質は、科研費の採択数や金額が、端的に示していると思う。金額は、医学系や理工系がある大学で高くなる傾向があるので、その点は差し引いて考えなければならないが、その順位は各大学の研究の質のランキングを表していると思う。それは、学生の入学難易度の偏差値とはかなり違うランキングで、学生たちの大学選びの参考にすべきデータだと思う(添付参照、ただしこれは私立大学のみ)