新年は昔のことを思い出す時でもある。昔の知り合いから年賀状が来るからである。
自分が大学生の頃(つまり半世紀前に)、近くの図書館で読書会が開かれていて、それに参加し、その時の知り合い4人から年賀状がいまだに届く。それだけ、繋がりが深かったのであろう。ただこの50年間ほとんど会ったことはない。
図書館の名前は、市川市立図書館。読書会の名前は「さく壁読書会」(その会は200回以上続き、新聞でも紹介されたことがある)。
月に2回開かれ、読んでくるべき本(ほとんど小説)が決められ、その内容に関して、自由に話し合うというものである(終わってから喫茶店に行き、話が続くことも多かった)。
最初に参加した時の本が、大江健三郎の『死者の奢り』で、大江健三郎や安部公房や倉橋由美子といった、どちらかというと当時の純文学的作品が取り上げられることが多かった。『風と共に去りぬ』『戦争と平和』といった世界の名作が選ばれる時もあった。お蔭で、私の読書の幅は、大幅に広がった。
ただ、参加者に、自分で小説を書いている人がいて、同人誌などが発行されていたが、文学専攻のものはあまりいなくて(法学部や商学部の大学生が多かった。OLの人もいた)、文学的な論議がかわされた覚えはあまりない。みな好き勝手に感想を述べ合い、それで終わったように思う。
それでも、本をきっかけに、いろいろなことを話し合うという経験がそれまでの私にはなく、とても新鮮で3年近く参加し、一生の友のような知り合いが何人もできた。
その後、その友人に会う機会がほとんどない。そろそろ再会しないと、一生会えないかもしれない、と思うようになった。