藤原新也 Cat Melon

藤原新也には会員制のサイト(ブログ等)があるが、それとは別に1か月に1度くらいの頻度で更新されるCat Melonという公開のサイトがある。
www.fujiwarashinya.com/talk/
そのサイトに、今回の尾畠春夫さんの理稀ちゃん救出に関して、下記のようなマスコミでは言われていないことを書き、話題になっているという。
氏の過去のインドなどの旅行体験からきた氏独自の視点であろう。

<理稀ちゃん救出劇雑感。(藤原新也 cat Melon より一部抜粋)>

大島町で行方不明になった二歳児の理稀ちゃんが大分からやって来た尾畠春夫さん(78歳)に救助された一件はすべての曇りを取り払うがごとき快挙だった。私はこの救出劇の過程には少々異なった見方をしている。
実は尾畠さんは理稀ちゃん発見直後に少数の記者に囲まれ即席の談話をしている。その時、以降の記者会見の席やインタビューでは出なかった言葉がある。
彼は(出立のとき)「カラスがカーカーうるそう鳴くもんじゃけ」と口走ったのである。
私はこのカラスこそ今回の奇跡とも言える救出劇の隠れた立役者だと直感した。
私個人は尾畠さんが580メートル先上空にとりやま”を見たのではないかと思う。このとりやま(鳥山)は海にも立つが陸や山にも立つ。そしてそのとりやまの下には獲物があるということだ。その獲物は生きている場合もあり死んでいる場合もある。とくにカラスのような物見高い鳥は何か下界で異変があると騒ぎ立てる習性がある。これは日常的に死体が転がっているインドにおいても同じことである。
尾畠さんはおそらくその不吉なカラスのとりやまを遠くに発見してピンポイントでそのとりやまの下に向かった。私はそう考える。
20分の奇跡はかくして起こった。
そしてまた今回の奇跡の救出劇にそのような隠された事実があったとしても尾畠さんの快挙に微塵も汚点が生じるものではない。そしてそれ以上に今回の一件は助けたいという「念」の勝利でもある。その念とは愛に通ずる。(藤原新也)