NHKの年末恒例の「紅白歌合戦」の2021年は、いつもと少し趣向が違っているという印象を受けた。第1に「Colorful~カラフル~」という統一テーマに現れているように、紅(女)対白(男)という色彩が薄められ、紅白の勝ち負けにあまりこだわりがなくなった。第2に、全体の大きなストーリーの中にそれぞれの歌手や歌が配置されているという印象で、歌手や歌が、前面に出てくるという感じではなかった(実際歌や演奏の時間が少なかった。歌合戦ではないという批判も出ている)。第3に昨年の無観客の映像と近年のデジタル化の影響があると思うが、実際の観客を意識したものよりは、テレビを見る人向けの映像の作りになっていた。
これまでの紅白は、幼児や子供向け、ポピュラーやダンスの好きな青少年向け、演歌好きの中高年向けと時間で分けたり、男女の違いや、勝負を煽ったり、日本人が一つの絆で結ばれているという国民意識を強調したりで、不自然だなと感じることが多かったが、それが薄められ、新鮮さが感じられた。演出と司会(大泉洋、川口春奈、和久田麻由子)もよかったのかもしれない。
視聴率が40%に達せず、今回の紅白に厳しい評価もあるようだが、テレビ離れが進む中30%台の視聴率は決して低くなく、演歌好きの中高年の視聴がなくなったにしても、新しい時代のテレビのあり方を模索するNHKの姿勢を評価したい(テレビ視聴者を母数にして紅白歌合戦の視聴率を出せば*、紅白の視聴率は上昇しているのではないか。また視聴率×満足度を計算すべきという説もある)
*NHK紅白の視聴率34.4%,民放上位5社の視聴率の合計は32.3%. NHKも含め6社の視聴世帯を母数で計算するとNHK紅白は51.6% . したがって年末にテレビ見た世帯の半数近くがNHKの紅白をみていたことになる。