今から四半世紀くらい前は、教育の世界では、生涯教育や生涯学習のことが盛んに言われた。学校教育中心の教育から生涯学習中心の教育への移行がいわれ、学校教育もその観点からの見直しがいわれた。大学もその一翼を担い、各大学は社会人入学や大学の公開講座を開設するところも増えた。私の勤めていた上智大学も公開講座(コミュニティ・カレッジ)の伝統があり、多くの講座を上智の専任教員が開設していた。私も高等教育関係の講座を3回ほど開設し、その記録を『大学とキャンパスライフ』(武内清編、上智大学出版、2005)として残した。
今は、この生涯学習についてあまり聞かないように思う。団塊の世代が高齢化して生涯学習を必要ないし継続している数は増えていると思うのだが、それが常態化しているせいなのか、必要性が説かれたり、新たなことが提案されたりするのを目にしないように思う。
文部科学省のサイトで「生涯学習」というキーワード入れて検索してみると「第11期生涯学習分科会」というのがあり、そこで生涯学習のことが検討されているらしいことはわかる。ただその検討課題を見ると、「今般、社会全体のデジタル化が進む中、国は「デジタルの活用により、一人ひとりのニーズに合ったサービスを選ぶことができ、多様な幸せが実現できる社会」を目指すとし、「誰一人取り残さない、人に優しいデジタル化」を進めていくこととしている。」とか、「高齢化が進む地域社会(基礎自治体の中心部を想定)において必要とされる社会システム・社会の閉塞感や活動の制約が増す中で、生涯学習・社会教育関係者の果たすべき役割」「今回は、生涯学習と若者を取り巻く環境」をテーマに議論を行いたい。」など、一般的で、斬新さが全く感じられない。https://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chukyo/chukyo2/siryou/1422064_00008.htm
私の関係する敬愛大学にも「生涯学習センター」があり、千葉の広報にも載っている。独自の講座を開設するだけでなく、もう少し大学の授業を公開し、大学教育の生涯学習化をはかってもいいように思う。