理系の男女格差について

朝日新聞の「論座」(2020年11月21日)に山形大学教授の河野銀子さんが執筆した「理系の男女格差が縮まらない日本の問題点―教育環境のジェンダー平等を進めてきた欧米に見ならい、小中高の教育の変革を」が掲載されている。

https://webronza.asahi.com/science/articles/2020110400003.html?page=1  (3日間無料で読むことができる)

河野さんは、この分野を長年研究してきて,学術会議で同種のシンポも企画してきた人なので、説得力のある論が、実証的なデータの提示とともになされている。その一部を下記に転載する。

<日本の男女共同参画の歩みが遅い。女子の理系進路選択や女性研究者支援政策の国際比較研究に取り組んできた筆者にとっては、とりわけ科学技術・学術分野の男女共同参画の後れが気がかりである。 女性研究者が理系分野で少ないことは、程度の差こそあれOECD諸国に共通してみられる問題である。しかし、日本と欧米各国には大きな違いがある。それは、欧米各国では女性研究者の増加を目標とした実効性のある対策がとられてきたという点である。それらは、小中高校における教育のジェンダー問題の解消から始まり、積み残しを明確にしながら段階的に発展してきた。/ その概要を紹介し、日本でとりわけ足りないのは小中高校段階でのジェンダー問題の解消策であることを示したい。女性研究者や研究機関への支援だけでは、科学技術・学術分野の男女格差の問題は解決しないのである。>

<そもそも大学入学時からジェンダー格差がある。女子の大学進学率は年々上昇してきたが、依然として男子より約6%低く、専攻する分野の男女差も顕著である。/ 女子学生の専攻分野を見ると、1986年には人文科学と教育学で過半数を占めていたが、近年3割まで低下した。「医学・歯学以外の保健分野」や「その他」は、6.3%から15.3%へ、1.5%から8.3%へと上昇した。他方、理工系分野に上昇傾向はみられない。理学は2.5%から1.8%に低下し、工学は2.3%から4.9%になったが、1990年代後半の5%台からは下降している。/ 女子の進学は、既存の学問分野に分類しづらい「その他」や、ケアワーク等の資格に繋がる保健分野での伸びが顕著で、理工系の伸びはみられない。専門学校や短大が担ってきた看護師や保育士等の養成が大学でも行われるようになった影響等が考えられる。理工系博士課程に女性が増える基盤は脆いのである。その原因はと考えれば、学部選択以前に着目する必要があり、小中高校での具体的な取り組みが鍵となる。>