2つのことが関連がある場合、どちらが原因でどちらが結果であるかを判定することは科学にとって重要である。
高根正昭の『創造の方法学』(講談社現代新書、1979年)でも、因果法則を満たす3条件のうちの1つに「時間の順序」をあげている(残りの2つは、「共変」と「第3の要因の不変」)。時間的に先に起こった方が原因で、後で起こったことが結果であり、その逆では決してない。
そのことは、自然科学のみならず社会科学でもいえて、どんな複雑な事象でも、時間の順序を考えると、因果関係がはっきりする場合がある。
その「時間の順序」というのは社会的事象の因果関係を考える時の基本と思いながらも、先に紹介した(7月24日)、さだまさしの「いのちの理由」の歌を聴くと、納得してしまう部分がある。
私が生まれてきた訳は 愛しいあなたに出会うため。
私が生まれてきた訳は 愛しいあなたを護るため。
「自分が生まれ」(→「愛する人に出会い」)→「生まれきた子ども(あなた)を護る」というのは、この順が時間的な順序である(原因は時間的に前のことがらで、結果は後のことがら)にもかかわらず、「自分が生まれてきた」のは「あなたを護るため」と、歌っている。つまり、原因(目的)が「あなたを護るため」であり、その結果「自分が生まれた」と、時間の順序を逆転させている。そこがこの歌の歌詞の面白く、人を感動させるところなのであろう。