昔ある同僚の先生のお宅に電話をしたところ、奥様が出られて、「夫は今いない。私は関係がないので、大学で話してほしい」と、不機嫌な声で言われたことがある。そのようなケースは稀で、大抵は同僚の奥様が私のことをご存じで、丁寧な対応をして下さる。私が学生や院生の時、指導教授の先生のお宅に電話した時も、同様の丁寧な応対を受けたと思う。私たちの学生院生の頃は、少人数ということもあったが、研究室の先生(教授、助教授)が、ご自宅に招いて下さることがあり、また正月には年始の挨拶に伺うこともあり、先生の奥様の手料理をいただき、奥様は我々学生院生のことを気遣って下さっていただいていること感じた。
このような、大学における教員と学生院生との関係は、今は様変わりしていると思う。大学教員が、自分の私生活を学生院生に示すこともないのではないか。教師―学生院生関係は、公的な教える―教わるという関係であり、そこに私的な関係が入る必要や余地はないと考えられていると思う。現代の教師-学生関係はそれでいいと思うが、昔の先生の奥様や家族まで巻き込んだ研究室やゼミの教師―学生関係にもよさはあった、そこから学ぶことも多かったということを書いておきたい。教育は全人教育の面がある。
大学時代の恩師のひとりである松原治郎先生の奥様が、2月19日に90歳でご逝去されたというお知らせを息子さんからいただいた。昔松原先生の奥様からもいろいろお気遣いやお世話いただいたことを思い出した。ご冥福を心からお祈りする。