去る6月12日と13日の2日間にわたり、「日本子ども社会学会27回大会」が、遠隔で開催された。それへの参加の記録を少し残しておく。学会本部や大会校(大阪商業大学)の努力の賜物だと思うが、遠隔で行われた大会は大変スムーズで、自宅にいながら有意義な発表をたくさん読んだり(一般の発表はポスターセッションのようで、発表のyou tubeやレジメを見て、質問を書き込めるようになっていた)、見たり(ズーム会議)することができた。普段会えない人の顔を見ることができたのもよかったし、学会ならではの密度の濃い発言を聞くことができた。
1 ラウンドテーブル「コロナ禍で顕在化した学校と家族の脆弱性を活かす-DX と Diversity の相補性再構築の視座から-」(馬居、西本、多賀、望月他)は、今 教育のデジタル化で、いろいろなところに格差が生じており、そのデジタル弱者に、どのような支援をしていくかが問われているということを知った。デジタルの地域格差、家庭の経済格差、母親の働き方の違い等いろいろな要因が絡み、また学力観の変化もあり、とても複雑な状況だと理解した。
2 シンポジウム「オルタナティブな進路を選択した子どものゆくえ」(堀 真一郎、藤村 晃成、伊藤秀樹、貴戸理恵他)は、学校に代わるオルタナティブな教育の報告があり、「きのくに子どもの村学園」や、フリースクール、高等専修学校の事例から、そこに通う子どもの実情や進路からいろいろ議論があり、いいシンポだった。50名ほどが参加していて、私も「不登校の子どもにとって学校的なところより、ホームスクーリングの方がオルタナティブではないのか」「新型コロナ禍の中で、ネットによるホームスクーリングのようなものが適しているのではないか」と感じ、昔ホームスクーリングに関して原稿を書いた見地から質問したいと思ったが、慣れないズームの会議に臆してしまい、何も質問せず終わったのは少し悔やまれる。
3 テーマセッション「サイバー空間における『子どもの安全・安心』」(谷田川ルミ、尾川満宏、桜井淳平、玉田和恵他)は、ネット社会における子どもの安全の問題を、広い見地と教育と実践の見地から取り上げていて、聞き甲斐があった。ただ、1つ不思議に思ったのは、尾川氏らの大学と警察が共同でネット問題で教育現場の指導に当たっているという報告についてである。学校や大学と警察との関係は、私たちの世代は、全く敵対するものと考えていたが、現在では、同じ方向に向かい連携するものとなっていることに驚いた。かっての東大で大学闘争が全学的に広がったきっかけは、医学部の学生数名を排除するために機動隊が大学構内に導入されたということからで、そのようなことは戦後はじめてで、学問の自由が侵され大変なことが起きたという認識だった。今は、大学や学校に警察が入ることへの抵抗感が全くなくなっていて、時代の変化を感じた。
4 共同発表「母親の働き方が子どもの進路意識に与える影響とコロナ禍におけるその変化-沖縄における質問紙調査に基づいて」(西本裕輝、馬居政幸他)は、現代的な貴重なデータの提示に感心し、下記のような質問を書き込んだ。 <現代の教育問題を考えるのに貴重なデータの提示、ありがとうございました。さらに次のようなことも、データからわかれば教えて下さい。専業主婦の子ども(中学生)の学力が高いということですが、何か「限定」や「媒介要因」はないのでしょうか。「限定」というのは、たとえば能力の中位以下の子ども(小学校の成績の中位以下)の場合、専業主婦だと学力が高くなるが、能力の上位の子どもの学力は母親の就業形態に左右されない、などの傾向は見出せないでしょうか。「媒介要因」というには、たとえば母親の「学歴」や「教育熱心かどうか」によって、同じ専業主婦の子どもでも学力が違うということはないでしょうか。具体的には、「母親の学歴×母親の就労×子どもの学力」や「母親の就労×母親の教育観(教育熱心さ)×子どもの学力」という3重クロス集計のデータがあれば見たいと思いました。>
発表要旨集録は、下記で見ることができる。