学生文化の大学類型差&大学差

学校社会学研究会での私の報告は、主にこの3月に出した科研の報告書(「現代の学生文化と学生支援に関する実証的研究――学生の「生徒化」に注目して――」)を配布するこことであったが、学生文化の大学類型差&大学差を報告した。 今回、取り上げる大学は、「伝統総合大学」(入学難易度60以上)のA大学(国立)とF大学(私立)、「中堅大学」(偏差値5⒐〜50)のC大学(国立)とH大学(私立)、「新興大学」(49以下)のW大学(私立)とハ大学(私立)の6校である。いずれも首都圏に所在する大学である。(以下、考察の一部)

  1. 一般入試よる入学は、国立大学(A,C)に多く、私立大学に少なく、特に私立の「新興大学」(W,ハ)は少ない・
  2. 一般入試で入学した学生は、高校時代の受験勉強をよくしている。推薦やAO入試で入学した学生は、高校時代にあまり勉強をしていない。
  3. 第1志望で大学に入る率は、大学類型(偏差値)によらない。「新興大学」にも、推薦やAOで入学する学生は、第1志望で入学してきている。
  4. 「有名だから」という理由で、その大学を選ぶものが「伝統総合大学」(A、F)に多い。「新興大学」(W,ハ)では少ない。
  5. 「伝統総合」大学(A、F) は教養志向が強く、資格志向は少なくい。逆に、「中堅」「新興」大学では、教養志向が少なく、資格志向が強い。
  6. 部・サークル活動参加者は、「伝統総合」大学(A,F)、中堅大学(C、H)で多く、「新興」(W,ハ)で少ない。
  7. 友人との交友は、「新興大学(W,ハ)で盛んである。「一人でいるのが好き」は、「伝統総合」(A,F)で多い。
  8. 「学業・勉強の比重」は、「大学類型」差はあまりない。全体に学生は「学業・勉強」に比重を置く傾向がふえている。男女差があるが、大学差もあり、F大学が高く、C大学が低い。授業全体満足度も同様で、高いのは、F大学で、低いのはW大学である。
  9. 授業への出席率の高いのは、同様で、全体に学生は、授業によく出ている。「大学類型」差はなく、大学差がありF大学とC大学で高い。
  10.  先生との関係に満足度が高いのは、ハ大学、F大学、C大学である。低いのはA大学である。
  11.  職員との関係の満足度が高いのは、新興大学(W、,ハ)である。
  12. アルバイトの種類に大学差がある、家庭教師は偏差値の高いA大学とF,大学で多い。スーパーのレジや接客、ウエイトレスは偏差値の低いW大学とハ大学に多い。
  13. 「大学の全体の雰囲気に満足」は、「伝統総合」及び「中堅」で高く、「新興」(W,ハ)で低い。「今の大学に入ったこと」への満足度も「伝統総合」及び「中堅」で高く、「新興」で低い。大学に対する総合的満足には、大学のチャーター(知名度、偏差値)が働くのであろう。
  14. 「体の不自由な人や年寄に席を譲る」は、国立大学(A,C)で少なく、私立大学で多い。

全体的に、大学類型や大学差は、入学の時にかなりありながら、大学生活を送るうちに、差が小さくなっているのではないか。その中では私立F大学には、学業・勉強を主にする学生文化が多く存在することが伺われる。一方、偏差値の高いA大学は、先生との関係の満足度は一番低く、学業・勉強が生活の中で占める比重は高くなく、部活やサークル活動に参加する学生が多い。しかし、超伝統校・エリート大学ゆえ、その大学に入学したことへの満足度は高い。(表はクリックすると拡大します)

 
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