大学院時代の先輩で、武蔵大学で同僚だったTさんから多くのことを学んだ。ただ、一つだけ、学べなかったことがある。それは、学生の教育である。
Tさんは、学生に厳しく、授業やゼミで多くの文献を読ませ、かなりの量のレポートを課していた。成績評価も厳正で、怠ける学生は容赦なく落とした。
Tさん本人はとても優しい人だったが、その優しさを学生の前では決して見せず、「鬼のT」として恐れられていた。そのせいで、Tゼミの学生はよく勉強し、力をつけて卒業して行った。卒業間際にTさんははじめて、学生に自分の素顔を見せた。
その教育者としての姿勢に感銘を受けながら、私自身はそれが真似できず、学生に甘く、学生の要求に引きずられ、学生の教育がまともにできず、今日まで来てしまった。
最近、若い大学教員で、Tさんのような人に出会い、Tさんを思い出した。