大学の教師は、自分が読んで感銘した本を、学生に読むように薦めることが多い。私も今回発売になり話題になった村上春樹の『色彩を持たない多崎つくると、彼の巡礼の年』の最初の一部をコピーして学生に読ませたり、その解説の新聞記事(朝日新聞、4月23日、)をコピーしたりして、学生に読むように誘導しているようなところがある(実際はほとんど効果がないが、、)
だいたい、人に勧められて読む本や映画は面白くないというのが定番なので、聞き流せばよい。ただ、その勧めに従って読んだ場合、自分の感覚に合わなくて苦痛を感じる場合があるのではないか。
非常勤先の大学で、村上春樹の今回の作品は、「若者の友人関係や恋愛や生き方に関していろいろ考えさせられる内容が含まれているよ」と話したら、学生から逆に、「先生、そのような友人関係や恋愛のことなら、『僕等がいた』(小畑友紀著、小学館)が絶対いいよ。先生も読んでみたら」と言われた。授業に参加していた学生全員が、「そうだよね。あのマンガはいいよね」とその内容で、ひとしきり話が盛り上がった。
そこで、私は「そんなに学生がいいというのなら読んでみよう」と、帰りに、駅前のブックオフに寄り、(恥をしのんで?)店員に本の題名を言って、本の並んでいるところまで案内してもらい、全巻16冊中5冊を購入した。それは少女マンガなので、買うこと自体にもためらいがあったが(「怪しい人」と思われるのは必須)それ以上に、少女マンガのリテラシーのないものにとって、読むのがかなり苦痛で、1巻を読むのが時間がかかる。
一緒に買った村上春樹の『アフタダーク』(講談社、2004年)(どういうわけか、この本を読んでいなかった)の方に、手(目)が行ってしまう。
学生も私のすすめる本で、私と同じような苦痛を味わっているものもいるかもしれない、と思った。