過去の私のブログに、アフォーダンス【affordance】について、「動物と物の間に存在する行為についての関係性そのもの」である。しかし近年、特にデザイン領域においては、「人をある行為に誘導するためのヒントを示す事」というような意味で使用される事がかなり多い」と書いた(2016年5月16日)。 このアフォーダンスの例のようなことが、「排除ベンチ」という形で現在あり、問題になっていることが、最近(5月25日)の朝日新聞に掲載されていた。
「座面が湾曲していたり、中央部に金属の棒が付けられていたり、腰掛けの奥行きが短かったり……。一目見ただけでわかりますが、とにかく座りづらい。そういうプロダクト(製造物)です」 「ホームレスのように、ベンチを寝床にする人をズルとみなし、その一部のズルを黙認するのではなく、みんなが少しずつ不幸になることを選んでいます」「これは生活保護をめぐる対応に似ています。『一部に不正がある。不正は許されない。だから、全体を厳しくしよう』というものです」(五十嵐太郎・東北大学教授)
この記事で、「排除ベンチ」があからさまに果たす機能(ホームレスをを排除する等)は、アフォーダンスそのもので、問題であるにしても目新しいものではないが、「生活保護をめぐる対応に似ています」という指摘には感心した。生活保護や、ジェンダーの平等や、教育の世界では奨学金やいじめ対策法案なども、一見、弱者を支援する方策のように見えて、実際は弱者を社会の中で排除する仕組みがその中に組込まれているのかもしれない。それを検証・暴露するのは、社会学、教育社会学の研究者の仕事だと感じた。