敬愛大学の「地域社会とこども」という授業では、テキスト(住田正樹編『子どもと地域社会』、学文社、2010年)を使い、学生にグループで発表してもらっているが、今週は予備日としたので、私が何か話題を提供しなければならない。
前々回は子どもの遊び、前回は子どもギャング集団がテーマだったので、その流れで、外国の子どもの遊びやに日本の昔の遊びや遊び集団が紹介できればいいと思い、『子ども問題事典』(ハーベスト社)他いくつかの文献にあたったが、なかなか適当なものに行き当たらない。
そこで思いついたのが、昔見て感銘を受けた映画{『冬冬の夏休み』}の子どもの遊び。
私の世代の戦後の日本の地域で遊ぶ子どもと同じものが、台湾の子どもの様子で描かれていた。子ども達は、群れて川で遊び、地域や家族の大人たちに見守られて成長していく。日本で失われたものが台湾で残っているのかと、驚いた場面がいくつかある。
これを学生達に見せて、「日本の昔の子ども達の遊びもこのようなものだった」と伝えられないかと考えた。さらに、台湾という国の風土や歴史も参照しながら、日本と台湾の教育、子どもの遊びも比較も出来れば、いいと考えた。
しかし、私に台湾に関する知識が乏しい。数年前に1度、研究仲間と台北に行き、その歴史の一端にも触れ、台湾の学校もいくつ見学したが、台湾の教育や子どもについて体系だって話せる知識は私にはない。どうしたものか、迷っている。
映画『冬冬の夏休み』については、森田伸子氏の文学的で卓越した分析がある(『テクストの子ども』世織る書房、1993年p188~200)。
ネットで検索すると、誰が書いているのかわからなかったが、わかり易い解説が見つかった。この映画は、宮崎駿の「トトロ」との類似性が言われているという。それを、以下転載しておきたい。(http://blogs.yahoo.co.jp/pkddn557/59114717.html)
『冬冬(トントン)の夏休み』 侯孝賢(ホウ・シャオシェン)監督作品
製作年:1984、時間:98分、製作国:台湾、日本初公開日:1990/8/、
1984年の夏、小学校を卒業した冬冬(トントン)は、台北駅で妹の婷婷(ティンティン)と電車に乗った。夏休みを田舎の祖父の家で過ごすのだ――。美しい田園風景のなかで繰り広げられる、懐かしさと優しさに満ちた日々。多くの人に愛される作品。(侯孝賢監督の“青春4部作”の第2作目。)
小学校を卒業した冬冬(トントン)が、母親の病気のために妹の婷婷(ティンティン)と共に田舎の祖父の家で夏休みを過ごし、そこで繰り広げられる生活の日々を描き出した作品。
木々の緑、その中を走る鉄道など、実にのどかで懐かしさを感じさせる田舎風景を舞台に、冬冬をはじめとした子供たちの触れ合い、厳格なおじいさんの家での生活、頼りないが冬冬の相手をしっかりやってくれる叔父とその恋人碧雲との行動。
ノスタルジックさと子供たちの愛くるしさが全面に描き出された、優しさと詩情に満ちた傑作となっています。
その途中で出てくる2人組みの強盗、叔父が碧雲を妊娠させてしまったことによるトラブル、そして強盗2人組みが実は叔父の幼馴染であり、悪いこととは分かっていてもその強盗をかばう叔父の姿…。 一見するとシリアスなこの場面も子供の視点、かつ淡々と描写しているのでそこまで重苦しい雰囲気にはなりません。 そして、こういった展開を経験しながら何かを考え成長していく冬冬。
ほのぼのとした物語にピリッとした味わいが無理なく融合し、この作品を素晴らしい逸品へと仕上げています。
子供たちの何と可愛らしいことか! 田舎町につくなり、地元の子供たちとすぐに意気投合する冬冬。冬冬のおもちゃと交換するための亀の競争、河での遊びと木登り…。どこをとっても微笑ましいばかりです。
冒頭の小学校の卒業式で「仰げば尊し」を合唱するシーンも印象に残ります。 歌詞は中国語のようですが、これは日本統治時代の名残でしょうか? エンディングで「赤とんぼ」のメロディも流れ出し、台湾の映画なのにまるで日本の田舎を舞台とした映画のような感覚にとらわれてしまいます。
この映画が何よりも懐かしくほのぼのとした心地良い気分にさせてくれるのは、そういった要素も関係してるかもしれません。
よく「宮崎駿の『となりのトトロ』に似ている」という感想を聞きますが、確かに雰囲気はよく似ていますね。(本作の方が製作時期は早いですが)
◆関連作品◆ ・『風櫃の少年』 ・『童年往事 時の流れ』 ・『恋恋風塵』