生成AIにどんなことを聞いても回答してくれるが、依然生成AIは、どのような仕組みで回答を寄せてくるのか、その回答の真偽のほどはよくわからない。昨日(9月20日)の朝日新聞朝刊に、AI研究者の今井翔太氏と朝日新聞の論説委員とのAIに関する対談が掲載されていた。AI研究者の今井氏の見解のいくつかを抜き出す。
今の生成AIは、「穴埋め問題」の能力を徹底的に高めたものです。次に来る言葉を予測して、文章を出力します。/「ディープラーニング(深層学習)」によって大量のデータを自ら学習し、それを使って「穴埋め問題」を極めたのが2022年に登場したChatGPT(チャットGPT)で(す)。/ AIの現在の技術では、約1千万文字、朝日新聞の朝刊約50部分を数秒で読むことができます。そこからわずかな間違いを探したり、明らかにおかしな表現を見つけたりすることも可能です。文章を展開する構成力も上手です。/ネット上の膨大な情報を集め、分析するという作業で人間はAIに勝てません。/ 2030年代には、人間が可能なすべての知的行動ができる汎用(はんよう)人工知能(AGI)が出ていると思います。ヒューマノイド(ヒト型ロボット)が生まれ、記者のように現場に行って一次情報をとってくることすらできてしまうかもしれない。個人個人がAIで毎日、情報を届けてもらうようになれば、新聞もテレビも必要なくなるかもしれません。/ しかし、私たちの感情や気持ちを読み取ることはできない。一見似たような文体のコラムは書けますが、読者の心を動かすコラムを書けるのはやはり、心を動かす対象と同質の心を持つ人間です。/ リアルタイムの情報も、自動的に入ってくる仕組みはなく、最新の一次情報をとるのは人間です。数億人分のデータからAIが出力するのは、「平均的」なものです。
上記はAI研究者の言うことなので概ね正しいのであろうが、さらにAIは進歩していくだろうし、「読者の心を動かすコラムを書けるのはやはり、心を動かす対象と同質の心を持つ人間です」という指摘は、読者に聞いてみないとわからない。生成AIに相談して感銘を受ける人はたくさんいる。カズオ・イシグロの小説『クララとお日さま』(早川書房、2021)に出てくるヒト型ロボット(クララ)は、人以上に読者の心を動かす、と一読者の私は感じる。